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アメリカの緊縮財政を他国の財政拡大が相殺し、総需要は維持を続ける。日本は消費減税や円高政策より財政の中立スタイル維持が必要だ

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IMFは半年に1回の「世界経済見通し」で初めてトランプ関税の影響を本格的に織り込んだ予測を発表した (写真:PIXTA)

先月、IMF(国際通貨基金)は半年に1回の「世界経済見通し」を公表した。トランプ関税の影響を本格的に織り込んだ初めてのIMF予測で、示された世界経済全体の成長率は2025年+2.8%、2026年+3.0%と比較的マイルドだったが下方修正となった。関税問題の震源地であるアメリカも2025年+1.8%、2026年+1.7%と、やはりマイルドな成長鈍化が見込まれている。

関税は税収であり、その引き上げは増税効果を持つ。その効果だけではないにせよ、今回のIMF予測におけるアメリカの財政赤字は、2025年が昨年10月時点から0.6%ポイント、2026年が1.1%ポイント縮小する予想になっており(対名目GDP〈国内総生産〉比)、この財政緊縮化が経済を抑制する主な要素の1つであると考えられる。

最も目立つのはドイツ

しかし、アメリカ以外の主要国の財政収支の変化を見ると、最も目立つのは防衛費拡大に踏み切るドイツで、1年前時点の予測と比べて2025年の財政赤字は▲(マイナス)3.0%と1.7%ポイントも拡大し、2027年には▲4%近くまで拡大が予想されている。

それ以外に目立つのは中国で、1年前時点での予測に比べ2025年の財政赤字が約1%ポイント、2026年は0.7%ポイント拡大すると予想されている。中国は、アメリカとの関税交渉における立場を強化する目的で財政による景気維持を目指している。各国の目的は異なるが、アメリカの財政緊縮による需要減少をアメリカ以外の国々での財政拡大が埋め合わせる構図になっており、これが世界経済成長の鈍化がマイルドになっている要因の1つである。

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