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“節税”スキームに確信できない舞の海氏ら企業経営者に「確定利回り」「損失補填」を確約して資金提供させた男の陥穽

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野村証券と南青山FASに損害賠償請求を起こしている舞の海秀平氏(撮影/尾形文繁)
元力士で現在はNHKの大相撲解説者として活躍する舞の海秀平氏(以下、舞の海氏)が証券業界最大手の野村証券とコンサルティング会社の南青山FASに対し、計6453万円の損害賠償請求訴訟を起こしたことは「元小結『舞の海』が野村証券らに損害賠償訴訟」で報じた。
全国各地から講演に招かれ、道徳心や国のありかたについて説いて回る舞の海氏を土俵際へと追いやり、突き落としたものは何か。現役時代、「技のデパート」と呼ばれた舞の海氏の死角はどこにあったのか。
野村証券や南青山FASが舞の海氏に紹介した人物は、約300社の企業経営者から計約150億円ものカネを集めていた。この人物が考案した“節税”スキームを徹底分析したジャーナリスト、田中周紀氏による連載企画「“節税”のワナ―舞の海を突き落としたもの」。第3回は、舞の海氏を突き落としたスキームには大きなリスクが潜んでおり、スキーム考案者はそのリスクをヘッジ(回避)するための危うい策を伝えたうえで資金提供を勧誘していた実態を明らかにする。
【配信予定】
7月22日(火)第1回 舞の海を土俵外に突き落とした「知恵者」の正体
7月29日(火)第2回 舞の海ら300人もの企業経営者を騙した殺し文句
8月5日(火)第3回 舞の海氏らに「損失補填」を豪語した男の陥穽(本記事)
8月中旬 第4回
8月下旬 第5回
9月上旬 最終回 

投資詐欺の一種であるポンジスキームと節税(実態は脱税)を一体化させ、全国の企業約300社から約150億円を引き出したとされる、東京都渋谷区のコンサルティング会社「BUONO」(破産手続き中、以下ボーノ)代表取締役の首藤弘被告(45)。同被告は2019年以降、同社が営んでいるという電気料金削減サービスに絡み、自身が実質経営する営業代行会社「NEXT INNOVATION INC」(現・RiseAll、破産手続き中、以下ネクスト社)に事実上貸し付けられた資金を業務委託費に仮装させることで、節税を考えている企業経営者らに法人税などの納付を免れさせていた。

首藤被告自らが考案したという“節税”スキームの流れはこうだ。①ボーノは、納税額を抑えたい企業に対し、ボーノが営んでいるという電気料金削減サービスの顧客を獲得する販売取次店の業務を委託し、②委託を受けた企業側は、ボーノグループのネクスト社に顧客獲得業務を再委託して業務委託費を支払い、これを損金(経費)として一括計上し、③ボーノはその後、ネクスト社が新たに顧客を獲得した対価として、企業側が業務委託費の名目で提供した資金にあらかじめ約束していた利息分を上乗せして、継続手数料として36回または60回で月額均等払いする――。

当局に「仮装隠蔽」と結論付けられたスキーム

首藤被告は2019年以降、著名な税理士や公認会計士などを通じてこのスキームを企業経営者らに売り込み、約300社から約150億円を引き出したという。資金を提供した企業の中には、現役時代に「技のデパート」と呼ばれ、現在はNHKの大相撲解説者として活躍する元小結の舞の海秀平氏(57)が共同代表を務める「舞の海カンパニー」の名前もあった。

筆者は本特集の第2回で、「東京国税局査察部と東京地検特捜部が、首藤被告の“節税”スキームの中でスキーム利用者とボーノ、ネクスト社との間でやり取りされた資金について、業務委託費の支払いを仮装した貸し付けだったと認定し、同被告とスキーム利用者には意図的な仮装隠蔽の認識があったと結論付けた」と記した。

当局はなぜそうした判断に至ったのか。実はそのカギを握るのが、首藤被告が利用者の大半に渡していた「覚書」の存在だった。

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