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投資詐欺の一種であるポンジスキームと節税(実態は脱税)を一体化させ、全国の企業約300社から約150億円を引き出したとされる、東京都渋谷区のコンサルティング会社「BUONO」(破産手続き中、以下ボーノ)代表取締役の首藤弘被告(45)。同被告は2019年以降、同社が営んでいるという電気料金削減サービスに絡み、自身が実質経営する営業代行会社「NEXT INNOVATION INC」(現・RiseAll、破産手続き中、以下ネクスト社)に事実上貸し付けられた資金を業務委託費に仮装させることで、節税を考えている企業経営者らに法人税などの納付を免れさせていた。
首藤被告自らが考案したという“節税”スキームの流れはこうだ。①ボーノは、納税額を抑えたい企業に対し、ボーノが営んでいるという電気料金削減サービスの顧客を獲得する販売取次店の業務を委託し、②委託を受けた企業側は、ボーノグループのネクスト社に顧客獲得業務を再委託して業務委託費を支払い、これを損金(経費)として一括計上し、③ボーノはその後、ネクスト社が新たに顧客を獲得した対価として、企業側が業務委託費の名目で提供した資金にあらかじめ約束していた利息分を上乗せして、継続手数料として36回または60回で月額均等払いする――。
当局に「仮装隠蔽」と結論付けられたスキーム
首藤被告は2019年以降、著名な税理士や公認会計士などを通じてこのスキームを企業経営者らに売り込み、約300社から約150億円を引き出したという。資金を提供した企業の中には、現役時代に「技のデパート」と呼ばれ、現在はNHKの大相撲解説者として活躍する元小結の舞の海秀平氏(57)が共同代表を務める「舞の海カンパニー」の名前もあった。
筆者は本特集の第2回で、「東京国税局査察部と東京地検特捜部が、首藤被告の“節税”スキームの中でスキーム利用者とボーノ、ネクスト社との間でやり取りされた資金について、業務委託費の支払いを仮装した貸し付けだったと認定し、同被告とスキーム利用者には意図的な仮装隠蔽の認識があったと結論付けた」と記した。
当局はなぜそうした判断に至ったのか。実はそのカギを握るのが、首藤被告が利用者の大半に渡していた「覚書」の存在だった。
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