元小結「舞の海」が野村証券らを訴えた事件で浮かんできた令和の知恵者の正体。ベテラン国税OBを驚かせた「節税」スキーム

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詐欺スキームを紹介されたことで多額な損害を被ったとして野村証券などを訴えた舞の海秀平氏 (撮影/尾形文繁)
元力士で現在はNHKの大相撲解説者として活躍する舞の海秀平氏(以下、舞の海氏)が証券業界最大手の野村証券とコンサルティング会社の南青山FASに対し、計6453万円の損害賠償請求訴訟を起こしたことは「元小結「舞の海」が野村証券らに損害賠償訴訟 顧客に『脱税スキーム』を紹介した責任を問う」で報じた。
全国各地から講演に招かれ、道徳心や国のありかたについて説いて回る舞の海氏を土俵際へと追いやり、突き落としたものは何か。現役時代、「技のデパート」と呼ばれた舞の海氏の死角はどこにあったのか。野村証券や南青山FASが舞の海氏に紹介した人物は、約300社の企業経営者から計約150億円ものカネを集めていた。
この人物が考案した“節税”スキームを徹底分析したジャーナリスト、田中周紀氏による連載企画「“節税”のワナ 舞の海を突き落としたもの」をお届けする。

「ポンジスキーム」という言葉をご存じだろうか。「元本保証で運用し、その利益を配当金として定期的に還元する」などと約束して資金を引き出す一方、実際には運用など行わず、新たな提供者から引き出した資金を、それまでの提供者に配当金などと偽って返還するという形態の投資詐欺だ。

あたかも運用で得た利益を配当しているかのように装って資金を騙し取るのが狙いで、最終的にはスキームが破綻することを前提としている。20世紀前半、アメリカの詐欺師チャールズ・ポンジが編み出したことからこの名前が付けられ、「自転車操業詐欺」の別名でも知られている。

このポンジスキームに節税(実態は脱税)を組み合わせて、多額の納税の可能性に頭を痛める企業経営者から大金をせしめた“知恵者”が令和の日本に現れた。

東京都渋谷区のコンサルティング会社「BUONO」(破産手続き中、以下ボーノ)代表取締役の首藤弘被告(44)。同被告が自ら考案したというスキームの形は以下のようなものだった。

著名な税理士、会計士を通じて売り込み

納税額を低く抑えたい企業に対し、ボーノは同社が営んでいるという電気料金削減サービスの顧客を獲得する販売取次店の業務を委託。これを受けて企業側は、ボーノグループの営業代行会社「NEXT INNOVATION INC」(現・RiseAll、破産手続き中、以下ネクスト社)に顧客獲得業務を再委託して業務委託費を支払い、これを経費(損金)として一括計上する。

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