公明党が盛り込んだ「集団的自衛権の歯止め」は機能せず。高市「台湾有事」発言の混乱は、安保法制の欠陥に原因あり
存立危機事態をめぐる高市早苗首相の発言で、日中関係は大きく揺らいでいる。渡航の自粛や文化交流の制限、さらには自衛隊機へのレーダー照射問題にまで発展し、解決の糸口は一向に見えてこない。ネットでは、中国を好きか嫌いかの感情的な対立やイデオロジカルな分断があおられ、不毛な空中戦に陥っている。
当初案では歯止めが利かないと公明党が反対
中国との軋轢ばかりがクローズアップされているが、実はこの問題の本質は、2015年に創設された安保法制の成立過程にある。
自民党と連立を組んでいた公明党が、集団的自衛権行使の要件に歯止めをかけたものの、それでも恣意的に運用できる構造的な欠陥を持っていることが、高市発言で露呈したのだ。安保法制の成立時に取材をしていて抱いた懸念の正体が、いきなり目の前に突きつけられたように感じる。
限定的ながら集団的自衛権を認めた安保法制は、当時の安倍晋三首相の悲願だった。その安倍首相の方針に異議を唱えたのが、自民党と連立を組んでいた公明党だった。
14年、与党協議に臨んだ自民党の高村正彦副総裁が集団的自衛権を行使できる3要件を公明党に提示したとき、公明党の交渉役だった北側一雄副代表は「話にならない」と拒否した。安倍首相の意向が反映されたこの3要件には、こう書かれていた。
「国民の生命や権利を守るために不可欠な我が国の存立が脅かされるおそれ」
平和を党是としていた公明党は、これでは恣意的な解釈が可能で十分な歯止めにならないと受け止めた。当時の公明党がこだわったのが、憲法9条の規範性と、過去の政府見解との整合性だ。ここで公明党が注目したのが、政府の1972年見解だった。



















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