トランプによるウクライナ戦争の停戦交渉はなぜ失敗するのか、古典が示す世界で戦争が絶えない根本的な理由

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2025年3月23日、ウクライナのキエフで、ロシアの夜間無人機による空爆の後、消防士が住宅建物の被害を点検している。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、3年前のロシアの全面侵攻で始まった戦争を終結させるためのドナルド・トランプ大統領の取り組みの第一歩として、エネルギー資産への攻撃を相互に停止する提案に同意した(写真・2025 Bloomberg Finance LP)

フランスのある経済学者がインタビューで「なぜ西側の民主主義経済が、中国の全体主義的経済にくらべてうまくいっていないのか」とため息まじりに、しみじみと語っていた。これは、この経済学者に限らず、これまで西欧的思考でものごとを考えてきたすべての人々の諦めの気持ちを表わしているのかもしれない。

経済システムに限らず、西欧が作り上げた政治制度、とりわけ国際政治制度が危機に瀕しているともいえる。

調停能力を失ったトランプ

トランプは、ウクライナ戦争終結に向けて、超国家アメリカとして平和調停に乗り出したのだが、ウクライナ、ヨーロッパ、そしてロシアに拒否されてしまった。そして国連すなわちそれは西欧社会の象徴でもあるのだが、これも平和調停能力を完全に失っている。

なぜ国際的平和は実現しないのか。その前例は、すでに20世紀の両世界大戦の調停失敗の中に示されている。第2次世界大戦後に成立した国際連合は、この問題をまがりなりにも克服すべく創られた制度だ。その制度すら機能できていないということは、そもそも世界において、平和を実現することなど不可能ではないかというようにも見える。

とりわけ、国際連合を理想化している日本にとって、この意味は大きい。日本国憲法は第98条第2項において「日本国が締結した条約及びおよび確立された国際法規は、これを誠実に遵守する」と明言しているだけに、日本ではあたかも憲法を超えて国際法があるように見える。

しかし、実際には国際法とは19世紀から20世紀に欧米が決めてきた諸規定のことであり、これを文句なく受け入れる国などない。自国の利益が優先するからだ。

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