トランプによるウクライナ戦争の停戦交渉はなぜ失敗するのか、古典が示す世界で戦争が絶えない根本的な理由

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しかし、平和を望まないものなどどこにもいないことも事実で、それは西洋も東洋も同じである。5月9日のロシアの勝利宣言が、BRICSという新しい権力の勝利宣言の日になるのかどうか、それはわからない。

「平和を実現するには世界共和国しかない」

 

 

しかし、すでに3年を超える戦争を止めることが誰にもできていないという悲惨な現実は変わっていない。しかもそれが欧州に飛び火し、世界を巻き込んだ大戦争になるかもしれないという、大きな火種にもなっているのだが、誰もそれを消すことができないというのは、いったいどういうことなのだろうか。

 

こんな状態に対し希望をもつためには、自らの平和論を理論家の空想だと規定しつつ、理論の持つ意味をわれわれに伝えた、あのカントの『永遠の平和のために』を今一度再読するべきときかもしれない。

カントは、こう断言している。戦争を避けるだけの国際法という概念などは意味がなく、平和を実現するには世界共和国しかないのだと。たとえそれが夢想(Imagine)に過ぎないとしても、今現在のわれわれの直面する世界にとって、それが一服の解毒剤となり、そこから解決方法が見いだせるかもしれないのだ。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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