「不純物を取り除く」と発言した台湾・頼清徳総統の大問題。野党「排除」も失敗し、求められる対話の姿勢と「想像力」

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台湾の蔡英文前総統と頼清徳総統
前総統の蔡英文氏(左)の路線を継承するとしていた頼清徳総統(中央)だが、就任から1年経って変化がみられる(写真:Bloomberg)

台湾の頼清徳総統は5月に就任から1年を迎えたが、現在は政治的に大きな苦境に立たされている。7月26日に台湾では野党・国民党の立法委員(国会議員)24名の罷免(解職・リコール)を問う投票が行われたが、全員のリコール案が否決された。

就任1年の節目にあたり、日本の新聞やテレビなど各メディアでもインタビューや社説で取り上げられたほか、リコール投票の否決も報じられるなど一定の注目を集めた。だが、先の蔡英文政権のときと比較すると頼清徳政権についての日本での関心度は明らかに下がっているように見える。もっとも、これは台湾そのものに対する日本の関心が薄れていることを意味しない。

TSMCの熊本進出や「台湾有事」の議論などによりむしろ日本社会全体の台湾への注目度は以前より高い。台湾政治の動向は日本の経済そして本来の安全保障問題に直結したものであるはずだ。では頼清徳政権がさほど注目されないのはなぜか。最近行われた台湾での罷免運動に関する情報も含め、「政治家の言葉選び」と「タイミングの悪さ」というキーワードで議論していく。

意外と日本で知られていない頼清徳の人物像

頼清徳氏は地方首長(台南市長)、中央では行政院長(首相)、蔡英文政権2期目の副総統として豊富な行政経験を持つ。しかし、彼がどういう人物なのかは日本ではあまり関心がない。それは彼に魅力がないわけではなく、李登輝や蔡英文氏の人気や知名度のほうが特殊だったからだと言える。

台湾において総統選に立候補する政治家は、自らの政治的ビジョンや方針を示す著書を刊行することが通例となっている。実際に蔡英文氏も総統選前に出版していた。これらの書籍は経歴や業績紹介だけではなく、過去の人生においてその成功や挫折経験から何を考え、何を学んだのか、本人のその時々の思考の経過をたどるように描かれている。

しかし、2024年の総統選挙に際して、頼清徳氏はそのような著書を刊行していない。彼に関する著作(ほとんどの場合本人からの聞き取りをベースに担当者が書籍にまとめるスタイルがとられている)としては、台南市長1期目の4年を取り上げた2015年の書籍と2014年から2017年の台南市長時代、2017年から2019年の行政院長時代を扱った2019年に台湾で出版された2冊があるのみである。

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