2024年に東洋経済オンライン会員向けの「政治経済系」の特集・連載の中で「緊迫 台湾情勢」がよく読まれたランキング1位となった。多くの読者が閲覧してくれたことに執筆陣の一員としてお礼申し上げたい。今年最初の配信では、2025年の台湾情勢を台湾内政、中台関係、トランプ2.0の3方面から展望してみたい。
昨年1月「世界の選挙イヤー」の先陣を切って行われた台湾総統選挙で民進党の頼清徳氏が当選して1年になる。民進党政権が3期目に入ったものの、内政では国会にあたる立法院で与党が過半数割れし、行政と立法がねじれた状態となった。与野党の対立はかえって深まり、世論の支持もほぼ与野党半々に割れ膠着している。
他方、中国の台湾に対する圧力は高まっているが、すぐにでも「台湾有事」にいたるという状況ではない。中国にとって与野党対立で台湾社会が紛糾しているのは浸透工作を進めるのに好都合である。習近平指導部は、まずトランプ政権の出方を見極めて外交舞台でアメリカを牽制しながら、水面下で台湾を追い込むやり方を継続していきそうだ。
頼政権は、米中の動向をにらみながら内政で野党の攻勢に対処しなければならない。2025年は台湾内部の主導権争いが焦点になる。主導権を握った方が2026年11月の統一地方選挙を有利に進め,2028年総統選挙の勝利に近づく。台湾政局は与野党の対立がさらに深刻化しそうだ。
少数与党だが政権支持率は安定
頼政権がスタートした昨年5月からまもなく8カ月が経つ。台湾は韓国と異なり、行政院長(首相)を総統が任命し、国会の同意は必要ない。行政院(内閣)は民進党が引き続き単独で組閣し運営している。
しかし、立法院は最大野党の国民党が攻勢に出て主導権を握った。当初8議席を得てキャスティングボートを握った民衆党に注目が集まったが、同党は国民党と共闘する道を選び、重要採決で国民党に同調している。野党勢力は62議席で与党の51議席を上回る。
野党提出の法案が行政院の反対にもかかわらず次々と可決されている。直近でも中央政府の財源を地方政府に配分する財政の地方分権化法が可決され、行政院は予算のやり繰りに苦慮している。また最高裁判事の指名も立法院で全部否決された。
頼氏の政権運営は厳しい状況が続く。だが、押し込まれて何もできない状況でもない。打たれ強い卓栄泰氏を行政院長に任命したことが功を奏し、経済政策など日々の行政は正常に進んでいる。頼氏の党内基盤は安定し、国営企業トップなどの政府関連人事では強気の姿勢を見せている。
政権支持率も安定している。12月の世論調査で頼総統の支持率は53.4%、不支持は39.2%だった(美麗島電子報)。台湾では総統の支持率は就任半年で下落するのが通例なので悪くない推移だ。
頼氏の得票率が40%だったことを考えれば、むしろ健闘しているとさえいえる。安定した支持率の背景は、野党連合が立法院を主導していることに危機感を持った民進党支持者と一部中間派が政権支持に結集しているからだ。
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