「新興政党トップ拘束」で激震、台湾政治の行方 民進党優位に回帰方向も少数与党の苦しみ続く

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1月の国政選挙から1年も経たずに国政政党のトップが逮捕されるなど想定外の展開が続く台湾。11月のアメリカ大統領選の影響も懸念される。

台湾民衆党の柯文哲主席
汚職容疑で逮捕された台湾民衆党の柯文哲主席は「変人」と称され、ワンフレーズで有権者に訴えるスタイルが人気を博した。写真は1月の総統選時(写真:Bloomberg)

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世界的な選挙イヤーである2024年に、1月の国政選挙でその先陣を切った台湾。だが、そこで躍進を果たした新興政党が早くも危機的な状況を迎えている。

2大政党が根付いてきた台湾で、第3勢力として人気を集めた台湾民衆党のトップ、柯文哲主席が汚職容疑で拘束された。同党は今回の汚職容疑以外にもスキャンダルが相次ぎ発覚しており、支持者を中心に市民に衝撃が広がっている。

再び民進党優位の2大政党制に回帰か

問題となっているのは柯文哲主席が中心都市、台北の市長を務めていた2020年のことだ。同市の商業施設建設をめぐり、柯氏が容積率を不正に引き上げる便宜をはかり、賄賂を受け取った疑いがもたれている。

台北地検は8月31日に柯氏を逮捕したが、9月2日に地裁が勾留を認めなかったことから柯氏はいったん釈放された。ただ、地検側は証拠隠滅の恐れがあるなどとして抗告し、高裁は4日に地裁の決定を取り消して差し戻した。5日に台北地裁は検察側の請求を認めたことで柯氏は再び拘束された。

台湾民衆党側は反発しており、不当な政治弾圧だと主張する。9月8日夜には立法院(国会)に隣接する道路で同党とその支持者らが集会を開き、柯氏の潔白や司法の公正性への疑問を訴えた。

民衆党の立法委員(国会議員)団を率いる黄国昌院内総務は、過去に政治弾圧が行われた国民党一党支配体制になぞらえ、頼清徳総統による民進党と検察が一体化した新たな権威主義体制だと非難。民衆党側は柯文哲氏を既得権益がある強者にいじめられる悲劇のヒーローだとのイメージを作ろうとしている。

ただ、同党は既存2大政党への批判や新興政党としてのクリーンさを売りに発展してきた(詳細は本連載の平井新氏執筆「台湾で「独立」「統一」以外で躍進した新政党の失速」)。それだけに汚職容疑は、8月上旬に出た政治資金の不適切取り扱い問題とも相まって、民衆党に再起不能に近い打撃を与えたといえる。台湾政治は再び現与党・民進党優位の2大政党による対立構造に戻るだろう。

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