一方、政党支持率は12月時点で民進党35.8%、国民党22.3%、民衆党11.9%だった(台湾民意基金会)。与党が確かにリードしているが、圧倒的優勢でもない。野党2党を合計した支持率は34.2%で与野党が拮抗。対決法案への世論もほぼ半々に割れている。与野党ともに「民意はわが方にあり」と主張している。
野党は連合、リコールや死刑制度めぐり場外戦も
台湾では藍緑二大陣営(それぞれ国民党と民進党が中心)の対立が20年も続いている。その対立構造の超越を掲げて台頭してきたのが第三勢力の民衆党だ。しかし、いまや同党は国民党と連携し政権与党と敵対関係にある。
党主席だった柯文哲氏が、台北市長時代の汚職容疑で逮捕・起訴されたことも対立に拍車をかけた。民衆党は政権による「政治迫害」だと主張。世論調査を分析すると同党支持者の意識構造は国民党支持者とかなり近い。つまり政権与党への反感を共有し、支持者レベルで野党連合(藍白合)が成立している。
1月1日には柯文哲氏が党主席を辞任。立法委員(国会議員)の黄国昌氏(同党議員団長)が代理主席となった。柯文哲氏は民衆党の「創業者」で象徴的意味は大きいが、同党の野党連合路線は変わらないだろう。同党の支持率は昨年1年間でほぼ半減したが、残っているのは熱心な支持者で支持率は底を打った。今後も10%前後を維持していく可能性が高い。
3年後の2028年総統選挙は再選を目指す現職の頼清徳氏に対し、野党が統一候補を立て1対1の戦いになる可能性が高い。国民党の総統候補を民衆党が支援する形になるであろう。国民党にとってはこの「10%」の民衆党支持者を抱えておく意味は非常に大きい。国民党は民衆党がつぶれないよう側面サポートしている。
昨年1年間で立法院を舞台とする与野党の対立が過熱した。これがさらに燃え盛り、戦いが「場外」に広がる可能性がある。それは罷免投票(リコール)と公民投票(国民投票)だ。
民進党内では、選挙区の基盤が弱い国民党の立法委員に対して罷免投票を仕掛ける作戦が囁かれている。罷免成立後の補欠選挙で6議席を取れば過半数を回復できるという考えだ。この動きが出てきた場合、このままでは野党の行動によって台湾の憲法体制が破壊されるのでそれを防ぐためのやむを得ない手段と見るか、民進党が強引な方法で国会の過半数を回復しようとする党利党略と見るか台湾世論は半々に割れるだろう。
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