2025年の成長率は上振れ
出張前、筆者はASEAN経済に慎重な見方をしていた。
第1に輸出主導の経済構造である。同地域はグローバル・バリュー・チェーン(GVC)への統合が進み、対米貿易依存度が高い。このためトランプ関税の影響を受けやすいと考えていた。
第2に米中対立の長期化リスクである。第1次トランプ政権の米中貿易摩擦を受け、ASEANは中国企業が生産拠点を移す「チャイナ・プラスワン」の受け皿となってきた。しかし、トランプ大統領は、この中国企業の「迂回輸出」に着目し、取り締まり強化の姿勢を示している。
これによりチャイナ・プラスワン戦略の見直しや、海外直接投資(FDI)流入の鈍化が懸念された。
しかし現地ヒアリングでは、25年の成長率がトランプ関税発表直後の想定より上振れしているため、センチメントは上向きだった。
アジア開発銀行(ADB)によれば、東南アジアの25年成長率見通しは、同年4月の相互関税発表後に当初の4.7%から4.2%へ下方修正されたものの、最新の25年12月時点では4.5%へ上方修正された。
ASEAN主要国の相互関税率が20%程度へ引き下げられたことに加え、アメリカ向けの前倒し輸出やAI(人工知能)ブームの追い風により外需の急落が回避された。さらに各国での金融緩和や財政出動が内需を下支えした結果、減速幅は当初想定より小さくなった。
現在、シンガポールとベトナムの25年成長率(速報)はそれぞれ2.8%、8.0%と公表されている。両国とも24年から加速した。シンガポールはAI需要の追い風、ベトナムは対米駆け込み輸出の影響が大きい。
国を揺るがすフィリピンの汚職問題、インドネシアのデモや洪水被害といった一部の国内要因による下押しを踏まえても、外需の想定外の強さにより、ASEAN全体の25年成長率は24年と大きく変わらない水準に着地した可能性がある。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら