党派的分断が決定的なアメリカのエネルギー政策/いまや再エネは政権次第で振れ幅の大きな「スウィングアジェンダ」に
2025年1月20日、第2次政権をスタートさせたトランプ米大統領が最初に行ったのは「エネルギー緊急事態宣言」だった。バイデン政権の誤ったエネルギー政策が、アメリカを非常事態に陥らせたと痛烈に批判し、大規模な政策転換を図ることを宣言した。
エネルギーを再定義し、太陽光や風力を除外
この中で「エネルギー」を再定義し、原油、天然ガス、石炭などの化石燃料、原子力(ウラン)、重要鉱物などを指定する一方、太陽光や風力を除外し、連邦政府として支援しない姿勢を明確にした。同日、トランプ政権下でのエネルギー政策の中核となる考え方が、「アメリカのエネルギー解放」と題するものなど一連の大統領令によって示された。
電力部門の脱炭素化、石油や天然ガス開発の抑制と再生可能エネルギーの拡大を目指した前政権下での大統領令の多くを撤回し、石油・ガスの生産拡大とLNG輸出の促進、EV補助金の廃止、洋上風力からの撤退などに大きく舵を切った。
トランプ第2次政権は、シェール革命以降アメリカが目指してきた「エネルギー自立(エナジー・インディペンデンス)」を超えて、「エネルギー支配(エナジー・ドミナンス)」を掲げる。化石燃料や原子力など信頼性の高いエネルギー開発を拡大して国内のエネルギーコストを下げ、外国勢力がエネルギー供給を使ってアメリカを脅かすことを防ぎ、逆にアメリカのエネルギー輸出によって他国への支配力を高める、という概念だ。
国家安全保障、自国第一主義の観点からエネルギー政策を改めて位置づけ、脱炭素、気候変動といったグローバルアジェンダに対しては、それを「史上最大の詐欺」だと断じている。
エネルギー政策の司令塔は、2月14日にホワイトハウス内に新たに設置された「国家エネルギー支配評議会」だ。スタッフ数はそれほど多くないとされるが、各分野の専門家が配置され、省庁横断的にエネルギー政策全般について大統領に助言する重要な役割を果たす。
バーガム内務長官が議長、ライト・エネルギー長官が副議長を務める。エネルギー長官ではなく、連邦保有地の管理と開発にかかる許認可権限を持つ内務長官がトップであることが重要だ。
議会も追随した。7月4日に成立した財政調整措置法(通称OBBB)により、バイデン政権下でのインフレ抑制法(通称IRA)におけるクリーンエネルギーに対する税額控除の条件を厳格化し、支援を縮小した。風力、太陽光、水素、EVなどが縮小のターゲットとなる一方、同じクリーンエネルギーでもSAF(持続可能な航空燃料)などのバイオ燃料は逆に税額控除期限が延長された。
バイオ燃料はトランプ大統領の支持基盤である農業従事者の支援につながるからだ。脱炭素の中核技術であるCCS(二酸化炭素回収・貯留)も同様に厳格化の対象から外れている。これも、CCSが化石燃料セクターと高い親和性を持つことが理由だ。



















