テスラ「過去最高の売り上げ」でも消えない不安。イーロン・マスク氏は"重要な転換点"と主張するが…
テスラの2025年7~9月(第3四半期)決算は、売上高281億ドル(約4.3兆円)と四半期ベースで過去最高を更新し、市場予想を上回ったが、EPS(1株当たり利益)は0.50ドルにとどまり、予想の0.55ドルを下回った。
売上高の好調さは、9月末にアメリカでEV購入に対する税額控除が終了する前の駆け込み需要によるものだ。実際にテスラも通期の業績ガイダンスは示さず、貿易・関税・財政政策の不確実性を強調した。市場関係者の間では「EV需要は今後減速し、25年のテスラ車販売台数は前年比8.5%減少する」との見方も出ている。
注目すべきは利益率の悪化である。テスラは廉価版モデルを投入してEV市場での競争力維持を図っているが、1台当たり粗利益のさらなる低下は避けられず、第3四半期の自動車部門の粗利益率は17%まで低下、数年前の20~30%超という水準から大きく後退している。
こうした背景もあり、営業利益は前年同期比マイナス40%、純利益は同マイナス37%と大幅減益で、投資家を失望させた。同四半期の営業費用はAI研究開発への投資などで同50%も増加し、加えてアメリカが課した自動車部品関税のコスト負担が4億ドルを超え、利益を圧迫している。
直近の株価上昇に実態は伴っているか
2025年初来で見ると、テスラ株は春先に急落した後、秋にかけて持ち直しつつある。しかし、直近の株価上昇に企業業績の実態が追いついているかは疑問が残る。現在の株価上昇モメンタムの起点となったのは、イーロン・マスクCEOによる約10億ドル規模の自己株買いだった。
マスク氏は9月中旬、自身がテスラ株約25.7万株(約10億ドル相当)を購入したと開示。これが「創業者による将来性への自信表明」と受け止められて株価は瞬く間に6%以上急騰した。マスク氏の公開市場での株買い増しは2020年以来で、「テスラに再びフルコミットする強い意思の表れ」と市場に映った。この出来事が株価反転のきっかけとなり、低迷していた投資家マインドを押し上げたと考えられる。
その後もテスラ株を支えているのは、EV以外の新事業への高い期待感である。
マスク氏はここ最近、「長期的にはテスラの将来価値の80%は人型ロボットのオプティマスになる」とまで豪語し、同社をロボティクス・AI企業へと変貌させる野心を見せている。完全自動運転(FSD)ソフトウェアの開発にも注力しており、これら次世代プロジェクトがテスラ株の上昇ストーリーを牽引しているのは間違いない。



















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