吉田 ブダペストでの2回目の米ロ首脳会談はなぜ、見送られたのか。
松田 開催してもアラスカ会談と同様、プーチンが停戦に応じず、失敗に終わる可能性が高いとトランプが認識したからだ。10月16日にプーチンが掛けてきた電話でブダペストでの開催に合意したが、その後、ルビオ国務長官が行ったラブロフ外相との電話会談では停戦実現に向けた言質が取れなかった。勇んでブダペストでの会談開催を発表した際に、トランプは肝心の停戦実現を巡り、プーチンとの間で話を詰めていなかったのだろう。お粗末な話だ。
吉田 トランプは10月17日、訪米したウクライナのゼレンスキー大統領との会談で、「ウクライナは戦争に負けつつある」と言い放った。これより約1カ月前のゼレンスキーとの会談では「ロシアは張り子の虎」だから全領土奪還も可能だと言っていたにもかかわらず、だ。なぜ短期間で彼は判断を変えたのだろうか。
トランプはまた豹変し、トマホーク供与も見送った
松田 ゼレンスキーも欧州も、トランプの豹変には驚いただろうが、トランプは戦況を自分なりに判断して、ウクライナが優位と思えばゼレンスキー側に立ってロシアに圧力を掛ける。その逆の判断をすれば、ロシア側に立ってゼレンスキーに圧力を掛ける。今回はなぜかロシアが最終的に勝つというプーチンの主張を真に受けて、こうなったのだろう。
吉田 トランプはゼレンスキーとの会談で、長距離巡航ミサイル「トマホーク」の供与を条件付きながら、表明する可能性が高いとみられていたが、これも見送った。
松田 トランプの気持ちに立つと、停戦を一日も早く実現するのが至上命題。プーチンを交渉のテーブルに引っ張り出さない限り、戦闘終結はない。この点に限って言えば、ウクライナも欧州も同じ立場だ。
9月以降、トランプはロシア領内奥地を攻撃できるトマホークのキーウへの供与をちらつかせてロシアに圧力を掛けた。その結果、ゼレンスキーとの会談直前という絶好のタイミングでプーチンから米ロ首脳会談を提案する電話が掛かってきた。これにトランプは飛びついた。実際に供与しなくても、結果的に圧力材料になったのだから、これで解決するなら供与しなくてもよいではないか、というのがトランプの判断だ。

















