
2025年8月、アメリカ大統領・トランプの主導で、ウクライナ侵攻後初の米ロ首脳会談が開催された。そして、それを皮切りにアメリカ、ウクライナ、欧州主要国首脳などを交えたトップ協議が相次いだ。はたしてこの超異例の連続サミットがウクライナ情勢に早期和平をもたらすのか。その答えは本稿執筆時点ではまだ見通せない。
しかしこの行方にかかわらず、今回はっきりと浮かび上がったことがある。今後の国際秩序の方向をめぐり、米欧間で相反する2つの新旧の政治潮流がぶつかり合い、相克し始めているということだ。これを象徴する外交の表舞台での動きと、相克の背後にある重要な変化に迫ってみた。
トランプは犯罪まみれのプーチンを「合法化」した
国際法違反の侵攻を開始したうえに、国際刑事裁判所(ICC)からは占領地域からの子供拉致に関与した疑いで逮捕状が出ているロシア大統領・プーチンに対し、トランプはアラスカのアメリカ軍基地に赤絨毯を敷いて歓迎した。「国際的パライア(のけ者)」と呼ばれ、犯罪的行為まみれのプーチンの「存在合法化」を内外に宣言することを狙ったパフォーマンスだった。
一方でウクライナと欧州は今、かつてない強力なタッグを組んで、プーチン和平案に強く抵抗している。その主要な対象は、領土の交換である。ここでも法的な問題が重要な争点となっている。
プーチンの提案は、ウクライナ東部ドネツク州に残った非占領地を含め、ドンバス地方(ドネツク・ルハンスク両州)全域を正式にロシア領として差し出すことを要求している。
他方、ウクライナのゼレンスキー政権は2024年秋、徹底抗戦を続けつつも最終的には外交解決を図るとの方針に舵を切った。これは、全領土の約20%を不法に占領しているロシアに対し、和平達成後も事実上(デファクト)の支配継続を受け入れるという決断だ。
ただし、法的(デジュール)な割譲は認めない。占領地は将来、外交的手段で取り戻すことを目指しているからだ。ましてや、ロシアが占領してもいないドンバスの領土を割譲することは絶対に承諾しないとの立場だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら