ウクライナ和平でトランプがプーチンに接近する理由/共鳴し合う「法治軽視」トランプと「独裁」プーチン/アメリカ版オリガルヒとは何か

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エロール・マスクの講演は驚くべき内容だった。「息子によると、ウクライナ戦争は人類史上、最大のインチキ話で、ロシアは挑発されただけだ。私も完全に同じ意見だ」。

こうした出来事が示しているのは、広義のトランプ周辺人物の中には、プーチン政権と接触を保つ有力者がおり、ウクライナ侵攻が国際法違反であるとの認識がないという事実だ。この出来事は国際的にもアメリカ国内でもほとんど報道されていないが、ウクライナ情勢をめぐる米ロ両政権の基本的認識が「地下茎」のように絡み始めたと言える状況だ。

こうした中で、欧州側はホワイトハウスでの会合で、トランプ調停への謝意を連発し、ナルシストでもあるトランプの自尊心をくすぐる作戦を徹底して展開。和平をめぐる、アメリカとの溝が表面化する事態を回避しようと必死の努力を続けている。

ウクライナが停戦しても「戦間期」でしかない

戦闘が終結しても、数年後には戦力を立て直したロシアがバルト3国などを攻撃してくるシナリオに欧州は警戒を強める。そのため、欧州は今回、米ロ主導で「和平」が実現しても、その「平和」が次の侵攻までの「戦間期」にしかならないことを恐れている。ゼレンスキー政権も同様の立場だ。

日本にとっても、こうした懸念は他人事ではない。欧州とともに、法治に基づく従来の国際秩序の守り手になるべきだ。唯一の同盟国であるアメリカに対して、欧州と同様に気を遣いながらも、ウクライナや欧州と連携して、具体的行動をすべきときを迎えている。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。また、2024年7月9日付の東洋経済オンライン「金正恩がロシアに工兵部隊の派遣を約束した!」で、北朝鮮がウクライナ侵攻への派兵を約束したことを世界で最初に報じた。

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