
2025年5月9日、モスクワ赤の広場で毎年恒例の対独戦勝記念式典が開かれた。この記念日は、ロシア政府にとって政権の求心力を高める上で最重要のイベントで、おまけに今年は80周年という大きな節目の年だった。
式典演説でプーチンは何を語り、何を語らなかったのか。ウクライナ和平は今後どうなるのか。全体状況を俯瞰してみると、ここ1、2週間で局面が舞台回しのようにガラリと転換していた。何がどう変わったのか。
「プーチンは焦っている」
「プーチンは相当焦っている」。式典でのプーチンの動きをウォッチしていた筆者はこうした印象を強く持った。この根拠はいくつかあるが、まず演説を分析してみよう。
驚いたのは、4年目に入った「特別軍事作戦」と呼ばれる侵攻を「全国民が支持している」と強調する一方で、侵攻における軍事上の具体的成果にまったく触れなかったことだ。
80周年という節目の式典で、多くの国民はこの侵攻でどこまでウクライナ軍を敗走させたのか、大統領が発表すると期待していたはずだ。ウクライナ東部でロシア軍が2024年秋以降、大規模攻勢で占領地を大幅に拡大したことや、今年に入ってからはウクライナ各地への相次いだミサイル攻撃が報道されていたからだ。
ではなぜ触れなかったのか。理由は簡単だ。最近ウクライナ市街地への非人道的なミサイル攻撃が続き、ロシアが国際的非難を受けているが、実はこれ以外に地上戦で目立った戦果が上がっていないからだ。
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