局面一変・ウクライナと米欧に追い込まれたプーチン、ウクライナ和平で何が起きているのか

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ミサイルや無人機による市街地への空爆は確かにウクライナ国民を恐怖に陥れている。しかし、東部ドンバス地方(ドネツク・ルハンスク両州を指す)での地上戦では、2025年に入ってからは、1月から3月までの毎月、占領地拡大のペースが前月より落ち込んだのが実情だ。

2025年4月こそ、占領地の拡大のペースが少し上がった。これは今回の戦勝記念日に向け、プーチンが戦果を出せと軍に大号令を掛けたためだ。しかし結局、演説で誇れるような成果を上げられなかった。いまだに「戦勝」が近いと国民に誇示できる状況ではまるでないのだ。

ロシア軍の継戦能力が低下

ウクライナの軍事筋はロシア軍の東部戦線における現状をこう指摘する。「ロシア軍の継戦能力が極端に低下している」。東部で「兵力や装甲兵器が足りないロシア軍は2日間なら大規模な攻撃を掛けられるが、3日目になると、同じレベルを維持できない」と指摘する。

東部戦線で最大の攻撃目標となっていたドネツク州の要衝ポクロウシクでは依然攻撃が続くものの、攻撃の回数や規模は急激に落ち込んだ。守勢を余儀なくされていたウクライナ軍が反撃するケースも出てきた。「ポクロウシク情勢を安定化できた」と、ウクライナ軍事筋はこう断言する。つまり攻撃されても守備ラインが崩壊することはもうない、という意味だ。

プーチンにとって、不都合な軍事情勢はまだある。記念日直前にモスクワや第2の都市でプーチンの出身地であるサンクトペテルブルクなど各地に対し、ウクライナが過去最大規模の計500機以上のドローンで攻撃を仕掛け、モスクワの主要3空港などが一時離着陸を停止し、大混乱に陥ったのだ。

このため、プーチン政権は軍事パレードも行われる記念日当日に、ウクライナ側が同様のドローン攻撃を行い、式典を大混乱させることを懸念した。仮にそのような事態になれば、プーチン政権の威信は地に落ちる。ロシアは記念日前後の3日間、一方的に停戦を発表したが、赤の広場へのドローン攻撃を回避することが、真の狙いとの見方もあった。

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