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経営危機の日産自動車、社外取に「NO」突きつけた幻の株主提案、ガバナンスの最先端・指名委員会等設置会社の欠陥

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6月24日に開かれる日産自動車の定時株主総会。会社提案と株主提案で合わせて7つの議案が決議される。ただ、審議されない幻の株主提案があった(記者撮影)

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「取締役木村康、永井素夫、井原慶子を取締役として選任しない(不再任とする)」

6月24日に開かれる日産自動車の定時株主総会では、会社提案の2つの議案に加え株主提案の5つの議案が決議される。ただ、それ以外に社外取締役の責任を問う幻の株主提案があった。

「当社の業績は壊滅的な状況にあり(中略)PBRは0.20倍と極端に低く、(国内の完成車メーカー)9社中断トツの最下位である。(中略)当社経営陣による『人災』という他ない。殊に、CEOである内田誠氏の経営者としての能力は極めて低く、そのような人物をCEOに選んだ当時の取締役会の責任は重大である。(中略)内田氏がCEOを退任して済む話ではなく、同氏をCEOに選んだ取締役も責任を取る必要がある」

怒りに満ちた提案理由とともに、内田氏の社長選任時の指名委員会委員で、現在の独立社外取でもある木村康氏(ENEOSホールディングス名誉顧問)、永井素夫氏(みずほ信託銀行元副社長)、井原慶子氏(カーレーサー出身)の3名を不再任とすることを求めている(アンドリュー・ハウス氏【ソニー・インタラクティブ エンタテインメント元社長】も上記条件に当てはまる)。

実際には、この株主提案が24日の株主総会で議案として扱われることはない。日産は、この提案を取締役選任議案の反対の意向表明として整理し、招集通知の取締役選任議案の注記として細かな文字で記述するにとどめているからだ。

そのうえで、日産の取締役会はこの株主提案に対して「反対」を表明。「(3氏は)それぞれの専門知識と豊富な経験を生かし、当社の成長に寄与してきた実績があります。今後も彼らのリーダーシップが必要であると考えております」と意見を招集通知に記載している。

内田氏は退任でも選んだ社外取は留任

日産は稼ぎ頭だった北米事業の不振などで昨年夏以降に業績が急悪化した。同11月には従業員9000人をリストラする再建策を発表。翌12月には電撃的にホンダとの経営統合協議も打ち出した。

しかし、「日産の完全子会社化」を求めたホンダと「日産の自主性」を守ろうとした日産の溝は埋まらず。世紀の統合は協議開始からわずか2カ月で瓦解した。規模もスピード感も不足したリストラ策がたたり、2025年3月期の最終損益は6708億円の巨額赤字に沈んだ。

諸々の責任を取る形で、2019年から社長を務めてきた内田氏は2025年3月末で退任となった。3月11日に開かれた社長交代会見では、内田氏が「従業員からも信任が得られない状況に陥った」と語った。

この会見で記者は社外取の経営責任をどう考えるのか質問した。取締役会議長の木村氏は「責任の重大さは全員認識している」と認めつつ、社外取8人全員を留任させると明言した。実際、その後に正式発表された取締役人事案でも8人は全員留任となり、定時株主総会に諮られる取締役候補に名を連ねている。

ただ、日産の社内外から「執行役だけ替えて、社外取が居座るのはおかしい」といった批判は絶えない。冒頭の株主提案は多くの関係者の思いを代弁している。

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