エリオットが住友不動産に送った経営陣批判の「書簡」を公表、久しく伏せていた「こわもて」の顔を総会前に見せた深い理由

「企業価値およびコーポレートガバナンス向上に向けた追加的施策が講じられない限り、株主総会において住友不動産経営陣に反対票を投じる」
6月8日、刺激的な文言から始まる書簡が公にされた。差出人はアメリカのアクティビストファンドのエリオット。いわく住友不動産(住友不)の株式を3%以上保有し、過去数カ月にわたって経営陣と対話を重ねてきたという。
近年、エリオットは日本株投資を拡大させてきた。その一例が、ソフトバンクグループに大日本印刷、三井不動産(三井不)、住友商事、東京ガス。住友不もバリュー株投資の延長線上にあるかと思いきや、決定的に異なる点がある。エリオットが経営陣を批判する書簡を公表したのは、住友不が初めてだからだ。
久しく伏せていた「こわもて」の側面を、エリオットがこの局面でのぞかせたのには理由がある。

業を煮やしたエリオット
「とうとうしびれを切らしたようだ」。市場関係者はエリオットの行動に驚く。
書簡の中で、エリオットは住友不の課題を4つ指摘した。低い配当性向、過大な政策保有株、ROE(自己資本利益率)目標値の不在、そしてガバナンスの不備だ。改善を迫るエリオットに対して「住友不も応じる姿勢を見せたが、予想以上に動きが遅い。やむなく公開書簡を通じてプレッシャーをかけにきた」(事情を知る関係者)。
両者のすれ違いを象徴するのが、ROEの向上策だ。住友不が3月に公表した中期経営計画で、2025年3月期に2670億円と見込んでいた経常利益を2年後に3000億円、10年以内に4000億円超に伸ばすと宣言。過去最高益を更新し続けることで、ROEの「分子」たる純利益を伸ばすとうたった。
だが、エリオットが着目したのは、ROEの「分母」である自己資本の圧縮だ。2025年3月期の配当性向は三井不が34.7%、三菱地所が28.5%に対して、住友不は17.3%。中計においても、配当性向は3年後でも24%にとどまる見通しだ。
自己株買いもあくまでストックオプション用の株式取得が目的で、株主還元の意味合いは薄い。