急速に緊迫した中東情勢は、依然として不透明な状況が続く。
アメリカとイスラエルは2月28日にイランへの攻撃を開始。その後、アメリカ中央軍(CENTCOM)は3月5日、「イランによるミサイル・ドローン攻撃は初日と比べて8〜9割減少した」と発表した。3月6日にはイラン国軍報道官が、「ホルムズ海峡は封鎖していない。通過したい船舶は航行できる」と発言したが、物流の現場ではまったく異なる現実が広がっている。
船舶の位置情報を示すAISデータによると、ホルムズ海峡では通常1日約140隻が通航するが、本稿執筆時点では数隻まで急減し、実質的に商業海運は停止状態となっている。合同海洋情報センター(JMIC)の3月8日付文書でも、過去24時間の商業通航は1隻にとどまったとされている。
トヨタ自動車にも影響?
この異常事態は、すでに日本企業の出荷判断や生産計画にも影響を及ぼしている。
貿易プラットフォームを提供するShippio(シッピオ)には、「中東向けの出荷を続けるべきか」「洋上にある貨物はどう扱うべきか」といった問い合わせが急増。「中国でも樹脂材が手に入りづらくなっている」という声が寄せられ、製造業でも生産計画への影響がみられる。
さらに、ヨーロッパからの輸入航空貨物が中東のハブ空港であるドバイで足止めとなるなど、航空輸送にも大きな影響が出ている。
マースク(デンマーク)、CMA CGM(フランス)、ハパックロイド(ドイツ)などコンテナ船大手は湾岸向けの新規予約を停止しており、倉庫の現場では出荷停滞と保管コスト増が深刻化している。すでに輸出倉庫に入った湾岸向け貨物は、船積みの見通しが立たないまま保管費だけが増え、一旦引き取って自社倉庫へ戻すケースもある。
影響は中東向けにとどまらない。
中国発の貨物の見積原価が日ごとに変動するなど、サプライチェーンの不安定化は広範囲に及んでいる。トヨタ自動車が中東向け車種で約2万台の減産を計画しているとの報道もあり、物流の混乱は、いまや生産・調達・販売のすべてに波及し始めている。
では、物理的な封鎖が行われていないにもかかわらず、なぜホルムズ海峡では商業海運が停止状態に陥っているのか。
海運を止めているのはミサイルや機雷ではない。保険・契約・実務が連鎖して生まれる“見えない封鎖”である。なかなか実態が語られることのない、この構造的断絶こそが今回の危機の本質だ。





















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