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ニデック“TOB撤回”を識者はこう見た「牧野フライスを諦めていない」「真意は別にある」、勝者なき攻防で牧野フライスが残した“教訓”とは

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昨年12月27日のニデックによるTOB表明から4カ月余りで攻防は収束したが・・・・・・(撮影:尾形文繁)

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昨年末、工作機械メーカー・牧野フライス製作所への「同意なき買収」を表明したニデック。事前の打診を一切せず、“奇襲”とも取れる手法に経営陣や労働組合から猛反発を受けながらも、4月4日からTOB(株式公開買い付け)を始めた。
だが、牧野フライス側の抵抗は激しかった。ホワイトナイト登場までの時間を稼ぐため、全株主に無償で新株予約権を割り当てる対抗策を導入。その是非をめぐる東京地裁での法廷闘争でニデックは完敗し、5月8日にTOBの撤回を公表した(詳しくはこちら)。
なぜニデックは退いたのか。一連の騒動はどんな教訓をもたらしたのか。M&A(合併・買収)の実務経験が豊富なM&Aキャピタルパートナーズ(MACP)の辻井武弘執行役員と、企業の買収防衛策に詳しいIBコンサルティングの鈴木賢一郎社長に談話形式で見解を聞いた。

辻井武弘・MACP執行役員
「マクロ経済の不透明感で冷静になった」

ニデックの撤退を受けて、旧村上ファンドが東芝機械(現芝浦機械)に仕掛けた「敵対的買収」の顛末を思い出した。TOBを開始した後、すぐに新型コロナウイルス禍が発生。先行きがまったく見えず、株価が全体的に落ち込む中、自分だけが高値をつけている。

そんな状況にやる気を失ったのか、村上ファンドは明らかにトーンダウンしていき、最終的には撤回した。コロナほどの影響は出ていないが、現状のマクロ経済はアメリカのトランプ大統領が表明した「相互関税」やグローバルでのリセッション(景気後退)、円高といったリスクが表面化している。

地裁決定は奇貨となった

牧野フライスを除く主要な工作機械メーカーの株価は、4月から5月頭にかけて軒並み下落傾向だった。主要顧客である自動車や半導体関連の需要動向が見通せない中、1株1万1000円の価格は本当に適正なのか。ニデックが割と早めに撤回した背景には、「一度冷静になろう」という心理も働いたのではないか。

そういう意味で、牧野フライスの対抗策を認めた地裁決定は、奇貨となったのかもしれない。このタイミングでTOBを撤回すれば、「検討のために与えた時間は十分」という当初のロジックを曲げずに済むし、自分たちのやり方が認められないのなら、潔くやめるという意思も伝わる。

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