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辻井武弘・MACP執行役員
「マクロ経済の不透明感で冷静になった」
ニデックの撤退を受けて、旧村上ファンドが東芝機械(現芝浦機械)に仕掛けた「敵対的買収」の顛末を思い出した。TOBを開始した後、すぐに新型コロナウイルス禍が発生。先行きがまったく見えず、株価が全体的に落ち込む中、自分だけが高値をつけている。
そんな状況にやる気を失ったのか、村上ファンドは明らかにトーンダウンしていき、最終的には撤回した。コロナほどの影響は出ていないが、現状のマクロ経済はアメリカのトランプ大統領が表明した「相互関税」やグローバルでのリセッション(景気後退)、円高といったリスクが表面化している。
地裁決定は奇貨となった
牧野フライスを除く主要な工作機械メーカーの株価は、4月から5月頭にかけて軒並み下落傾向だった。主要顧客である自動車や半導体関連の需要動向が見通せない中、1株1万1000円の価格は本当に適正なのか。ニデックが割と早めに撤回した背景には、「一度冷静になろう」という心理も働いたのではないか。
そういう意味で、牧野フライスの対抗策を認めた地裁決定は、奇貨となったのかもしれない。このタイミングでTOBを撤回すれば、「検討のために与えた時間は十分」という当初のロジックを曲げずに済むし、自分たちのやり方が認められないのなら、潔くやめるという意思も伝わる。
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