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信念を持ってやってきた
――ニデックに買収された場合、どのようなディスシナジーが見込まれますか。
いちばんの懸念は、工作機械メーカーとしての独立性がなくなることだ。当社はマシニングセンタ(MC)に特化しており、顧客の製品と被るものは一切作らない。創業から80年以上、信念を持ってそうしてきた。おかげさまで「牧野に頼めば情報が漏れることはない」と、非常に厚い信頼を得ている。
顧客の製造工程には、さまざまな形のノウハウがある。生産を1秒縮めたり、コストを切り詰めたりする。彼らは生き残るためにそういう勝負をしている。もし当社がニデックの傘下に入れば競合となりうるため、情報流出のリスクから「もう機械は買えません」となる。
だから、一般的に工作機械メーカーは量産品を作らない。ニデックは当社の顧客が離れたら、取引を再開してくれるように自分たちで説得すると言う。でも、どうやってやるのだろうか。
――独立性を重んじるのなら、買収されるリスクを負ってまで上場するメリットは何ですか。
当社が上場したのは、もう50年ほど前の話だ。創業者の故・牧野常造は公共性を重んじた。公から集めた資金で社会の役に立つ事業に取り組む、という意志があった。業界の発展のため、自分の持ち株を寄付し、工作機械技術振興財団も設立している。こうした思いを受け継いできた経緯がある。
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