狙われた牧野フライス、ニデック買収提案で"苦境" 「質問状」では拒絶感あらわ、迫るタイムリミット
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「いろいろと当社を取り巻く状況が騒がしくなっておりますが、注文いただいた機械を納期通りに納め、アフターサービス等も粛々とやっております。その点は心配しておりません。以上でございます」
工作機械大手の牧野フライス製作所が1月31日、オンラインで開いた決算説明会。モーター世界大手のニデックによるTOB(株式公開買い付け)予告を受け、経営陣が何を語るか注目されたが、登壇した永野敏之専務は冒頭にそう触れたのみだった。
ニデックが牧野フライスに買収提案したのは、昨年12月27日。完全子会社化を目指しており、全株を取得する場合の買収金額は2500億円規模となる。ニデックは4月4日からTOBを開始する予定だ。
日本初の「事前交渉なき」TOB
出席したアナリストが永野専務に対し、ニデック側が求める面談への対応を聞くと「先方に送った質問状への回答を見ながら、株主利益の最大化が(できると)わかれば、話し合いもしていく」と回答。両社の顧客層の類似性に関する問いには「それも(ニデックへ)質問している段階なので、私どもから今話すべきことではない」との返答にとどめた。
牧野フライスは現在、社外取締役4人でつくる特別委員会で買収の賛否について議論を進めている。こうした状況下で踏み込んだ発言は難しいうえ、「今は何を話しても感情論と受け取られかねない」(同社関係者)との危惧が口を重くしている。
ニデック側は今回の買収宣言にあたり、事前に打診を一切しなかった。M&A仲介大手レコフの澤田英之・リサーチ部長は「たとえ敵対的TOBに至る場合でも、水面下での交渉決裂を経るのが一般的。無接触での表明は、日本で初めてのケースではないか」と指摘する。
ともすれば“奇襲”とも取れる戦法に対し、牧野フライス側の心理的な反発は想像にかたくない。ただ、レコフの澤田氏は「資本市場の考えに照らせば、ニデックに問題はない。事前交渉を踏むと、普通は結論まで半年から1年以上かかる。その間に情報が洩れれば株価に影響するし、その点も考慮したのだろう」と分析する。
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