狙われた牧野フライス、ニデック買収提案で"苦境" 「質問状」では拒絶感あらわ、迫るタイムリミット
牧野フライスは業績こそ堅調なものの、市場からの評判は芳しくなく、PBR(株価純資産倍率)1倍割れが常態化していた。ニデックの買収提案後、牧野フライスの株価は高騰し、PBRは1倍を超えた。東洋経済は宮崎正太郎社長へのインタビューを申し込んだが、「今はまだ何も話せない」(広報担当者)と断られた。
4月4日に開始予定のTOBについて、牧野フライス側は「株主が是非を検討する期間が短すぎる」などとして、約1カ月の延期を文書で要求。だが、ニデック側は「提案から買い付け開始まで60営業日を超えて確保しており十分」と応じない姿勢だ。
にじみ出る拒絶感
レコフの澤田氏は「手続きに明確な瑕疵はなく、ニデック側は構わずに買収を進めるはず」とみる。一方、牧野フライスは2通の公開質問状を送付。その文面からは傘下入りへの強い拒絶感がにじむ。1月28日付の1通目はA4用紙19枚、質問項目は60超に及んだ。中でも多くを割いたのは、事業のシナジーに関する疑義だった。
例えば、ニデックは両社の技術や製品を組み合わせることで、より高度な複合加工を実現できると主張する。だが、牧野フライス側は「当社のお客様は、独自の技術による高速・高精度・高品位を要する工作機械を購入される方が多い一方、貴社のお客様は、より汎用的な技術で多くの需要に応えられる工作機械を購入される方が多い」と断じる。
ニデックは歯車加工機や旋盤、マシニングセンタ(MC)を手掛ける。ただ、MCで得意なのは汎用機。牧野フライスは対照的に超高性能なMCを武器とする。航空機部品などの精密加工に対応したカスタム品を主軸に据え、その技術力は世界トップクラスだ。
ある工作機械メーカー幹部は“一般論”としてこう語る。「工作機械は機種ごとに必要な技術が異なる。種類の違うもの同士は言うまでもなく、たとえ同じMCだとしても、汎用機と先端機はまるで別物。設計思想から生産方法、顧客層まで何もかも違い、組み合わせで付加価値を生み出すのは簡単ではない」。
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