
2025年10月17日、「吉野家」が新商品「とんこつ醤油牛鍋膳」を全国で発売開始した。
一見すれば、いつもの“「吉野家」鍋メニュー”の延長線上のものに見える。しかし、その中身を紐解くと「吉野家」の新たな方向性が見えてくる。監修したのは、吉野家ホールディングスの傘下にあるラーメン店「ばり嗎」だ。
「吉野家」が店舗でラーメン店とタッグを組んで商品開発したのは今回が初めて。そこには、単なる期間限定メニューの枠を超えた戦略的な意味がある。
吉野家HD、うどんに続きラーメンを第3の収益源へ
吉野家HDはここ数年、ラーメン市場に対して着実に布石を打ってきた。牛丼を主軸に、うどん業態の「はなまるうどん」を第2の柱として育ててきた同社だが、第3の収益源として「ラーメン」に照準を合わせている。
既に「ばり嗎」を展開するウィズリンクを完全子会社化し、さらに東京の人気店「せたが屋」などもグループに迎え入れている。M&Aによって多様な味の資産を取り込み、それをグループ全体でどう生かしていくか。それが今、吉野家HDが描く中長期戦略の核心にある。
ラーメン市場は依然として競争が激しく、個人店から大手チェーンまで参入が絶えない。しかし同時に、成熟市場の中でも“味のブランド化”が進んでおり、一定の支持を得たブランドは安定した収益を上げやすい。吉野家HDがラーメン事業に注力する背景には、業態の多角化だけでなく、クオリティの高い味を提供することでブランド価値を高めるという狙いもある。

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