今回の「とんこつ醤油牛鍋膳」は、グループ内のラーメン店との連携による初の商品化だ。監修を担当した「ばり嗎」は中四国・近畿を中心に展開するとんこつ醤油ラーメンチェーンで、国内外に計48店舗を構える。
この店のラーメンの特徴は、豚骨と鶏ガラ本来のうま味を最大限に引き出した濃厚スープにある。そのコクとうま味を、「吉野家」の牛肉と組み合わせることで、これまでの牛鍋膳にはなかった新しい深みを生み出している。

「とんこつ醤油牛鍋膳」の味の主軸となるスープは、「ばり嗎」のとんこつ醤油をベースに、牛肉や白菜などの定番具材を加えて仕立てたもの。そこに約1玉分のニンニクをフライ・おろし・刻みの3種でブレンドした別添の「にんにくマシマシだれ」を合わせることで、パンチと中毒性を演出している。
いわば牛丼屋が本気で作ったラーメンのうま味鍋であり、家庭的な鍋とも、専門的なラーメンとも異なる、新しいカテゴリーの料理といえる。
なぜラーメンでなく「鍋メニュー」として登場?
興味深いのは、今回のコラボがラーメンではなく「鍋」という形で登場した点である。「吉野家」は今年7月に「牛玉スタミナまぜそば」を発売し、麺メニューでの実験をすでに行っている。だが今回はあえてラーメンではなく、スープを中心とする鍋仕立てにした。この判断の裏には、「ラーメンの味をどう既存業態に溶け込ませるか」という経営的視点がある。

牛丼チェーンという既存フォーマットを崩さずに、ラーメンのうま味を導入する。そのことで、厨房設備やオペレーションを大きく変えずに新しい味体験を提供できる。つまり、グループの強みを最大限に活用した効率的な商品開発である。「鍋」という形態は、ラーメンの要素を残しながらも丼業態の範囲内に収まる、絶妙な落とし所だったといえる。
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