実際の味わいも高い完成度を誇る。コク深いとんこつ醤油スープが牛肉の脂と溶け合い、ニンニクの刺激が食欲を加速させる。ごはんが進む濃厚な味ながら、スープ自体にはバランスがあり、重すぎず最後まで楽しめる。具材に平打ちのうどんが入っているところもセンスが良い。
“牛丼屋で食べるラーメン鍋”という異色の組み合わせながら、どこか「吉野家」らしい安心感がある。食べ終えた後には、鍋メニューとしての満足感と、ラーメンを食した時の余韻が共存している。
“社内コラボ”でブランド資産を最大活用

このラーメン的な体験を、既存店舗で提供できる点が今回のコラボの肝だ。つまり、「ばり嗎」という自社ブランドを店舗数48店の枠から、全国1200店の「吉野家」網に乗せることができるわけである。これは単なるコラボではなく、ブランド資産の最大活用だといえる。
今後、吉野家HDは傘下の他ブランドとの連携も視野に入れているとみられる。グループ内における各ブランドの味や技術を横断的に活用し、既存業態の商品開発に反映する。これは、外食産業では珍しい社内コラボモデルである。
ラーメン事業を単なる別業態として展開するのではなく、そのノウハウを牛丼、うどん、鍋など他事業に還元していく。これはグループ内のシナジーを最大化する新しい試みであり、単一ブランドでは生み出せない商品群を創出する可能性を秘めている。今回の「とんこつ醤油牛鍋膳」は、その第一歩として位置づけられるだろう。

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