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ニデック“同意なきTOB”を撤回へと追い込んだ「地裁決定」の重み、それでも牧野フライスが痛手を負う「勝者なき」攻防の後始末

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ニデックは2023年に“同意なき買収”で傘下に収めたTAKISAWAに続き、牧野フライスへのTOBに踏み切ったが、地裁決定の翌日に撤回を表明した(撮影:尾形文繁)

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あまりにも突然の幕切れだった。モーター世界大手のニデックは5月8日、工作機械メーカーの牧野フライス製作所に仕掛けていたTOB(株式公開買い付け)を撤回すると発表。4カ月あまりに及んだ「同意なき買収」の騒動は、一旦の終局を迎えた。

牧野フライスのある社員は「社内はザワザワしている感じ。自分を含めて何が起きたのかよくわかっていない、というのが正直なところ」と困惑を隠さない。なぜならニデックは同社を手中へ収めようと、なりふり構わぬ姿勢を見せていたからだ。

昨年12月27日、牧野フライスへ事前の打診がなくTOBを表明。“奇襲”とも取れる手法に経営陣や労働組合は激しく反発したが、ニデックはまるで馬耳東風。

「競合提案との比較・検討の時間が必要」との理由で、牧野フライスから再三にわたり約1カ月の延期を要請されても、聞く耳を持たずに4月4日から買い付けを強行した。

そんなニデックに待ったをかけたのが、司法判断だ。ホワイトナイトが登場するまでの時間を確保しようと、牧野フライスは4月10日、全株主に新株予約権を無償で配る対抗策を取締役会で決議。この是非をめぐる法廷闘争で、ニデックは「全面敗北」を喫した。

商事の専門部が審理

敵対者の株式比率を希釈化する戦術は一般的に「ポイズンピル」と呼ばれ、代表的な買収防衛策の1つだ。ただ牧野フライスは「あくまでも時間確保が目的であり、ニデックの提案を妨げるための『防衛策』ではない」と主張していた。(詳しくはこちら

ニデックは対抗策が「株主平等の原則」に反しており、経済的な不利益を被るおそれがあるなどとして、4月16日付で東京地裁へ差し止めの仮処分を求めた。審理を担当したのは、商事に関する事件を専門とする民事第8部(柴田義人裁判長)。5月7日付で下された判断は「却下」だった。

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