有料会員限定

〈専門家に聞く〉牧野フライスのニデックTOB対抗策への評価は……「いざという時に慌てても遅い」「延期要求は正当な主張」

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

企業の買収防衛策やM&Aに詳しい専門家の目に、ニデックと牧野フライスの攻防戦はどう映っているのか。

ニデックと牧野
攻防を繰り広げるニデックと牧野フライス(上写真:編集部撮影、下写真:尾形文繁)

特集「ニデックvs.牧野フライス 敵対的TOBの攻防」の他の記事を読む

ニデックが2024年12月27日に突如として表明した、工作機械大手・牧野フライス製作所の完全子会社化に向けたTOB(株式公開買い付け)。その開始予定日の4月4日が迫る。
3月28日配信『牧野フライス、「ニデックTOB対抗策」に秘めた意図』で報じたように、牧野フライスは「複数の提案者から初期的な買収意向を受けた」として約1カ月のTOB延期を要請している。延期に応じなかった場合は「対抗策」として、全株主に無償で新株予約権を割り当て、ニデックのTOB後の持ち株比率を引き下げる策を取る考えだ。
両社の攻防はいったいどのような展開を迎えるのか。企業の買収防衛策などに詳しいIBコンサルティング社長の鈴木賢一郎氏と、M&A(買収・合併)の知見が豊富な早稲田大学客員教授の服部暢達氏に見解を聞き、談話形式でまとめた。

鈴木賢一郎・IBコンサルティング社長
「ニデックは結実しなくても気にしない」

ニデックが4月4日にTOB開始を強行すれば、訴訟に発展する可能性がある。牧野フライスは「1カ月だけ待ってほしい」と言っているだけで、無茶な要求ではない。対抗策発動には株主総会で決議を取るとも言っている。敗訴のリスクを考慮すれば、延期に応じる可能性は高いのではないか。

問題はその後だ。投資ファンドが競合提案を発表し、牧野フライスのホワイトナイトになったとしても、ストラテジックバイヤー(事業戦略上の買い手)であるニデックより高値をつけられるのだろうか。ファンドがストラテジックバイヤーに勝つのは理論上難しい。

価格競争にならない可能性

買収価格の算出に当たり、ニデックは自社とのシナジー効果を上乗せして牧野フライスの企業価値を考えられる。一方、ファンドが企業価値算出のベースとするのは牧野フライス単体の業績や将来性だ。ファンドなので転売や再上場によって一定期間内に利益を確保する必要もある。

IBコンサルティング鈴木
鈴木賢一郎(すずき・けんいちろう)/1974年生まれ。1997年に野村証券入社、引受審査部やIBコンサルティング部に所属。2016年に独立、IBコンサルティング設立(撮影:尾形文繁)

昨年、ローランド ディー. ジー.(DG)が投資ファンドのタイヨウ・パシフィック・パートナーズと組んだMBO(経営陣による買収)を行った際、ブラザー工業が「対抗TOB」を表明した。

ブラザーが買収案を取り下げ、MBOは成立したが、タイヨウはそもそもローランドDGの大株主だった。ブラザーより高い発射台からスタートした点で有利だった。今回のようにゼロベースでやるなら、どうなるのだろうか。

ニデックとしても、TOB価格での極端な競争には応じないだろう。適正価格以上は出さないと明言しているし、グローバルグループ代表の永守重信氏は心の中で上限を定めているはず。それに今回の買収が実らなかったとしても、そんなに気にしないと思う。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD