〈再生と変貌〉JR九州を襲った「組織崩壊の危機」、上意下達の縦割り風土を改める「異例の全社員対話」と「1600人幹部研修」
JR九州が、企業風土の根本的な改革に本腰を入れている。
かつては「九州の盟主」として確固たる地位を築いていたが、事情に詳しい地元の関係者は、その内実を次のように語る。
「一時期は新卒採用を見送っていたうえに、辞めていく社員も多かった。東京大学出身の社長が多く、国鉄由来の硬直的な意識もまだ残っていた」
この状況に危機感を抱いたのが、古宮洋二社長(63)だ。九州大学工学部を卒業した後の1985年に入社。当時は国鉄だったが、その2年後にJR九州が発足している。古宮社長は「JR世代」と位置づけていいだろう。
2022年に社長に就任すると、組織風土を変えるべく動き出した。「日本一明るく楽しい会社」への変貌を目指し、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(多様性と公平性、包摂性)」の本格的な推進を開始した。
JR九州が改革に駆り立てられた背景には、コロナ禍による深刻な組織ダメージがあった。
49歳以下の離職率が跳ね上がった
もともとJR東日本の山手線やJR東海の東海道新幹線のようにドル箱路線を持たないJR九州は、コロナ禍で「お客が来ない駅」が続出。運輸収入はコロナ禍前の19年度と比べると、20年度は約半減、21年度も6割の水準に落ち込み、痛手を負った。
業績も急下降し、20年度は189億円の最終赤字に転落。21年度は連続赤字を逃れたものの、最終利益は132億円と19年度の4割程度にとどまった。
業績の急悪化とともに、コロナ禍でのコミュニケーションレスは組織の歪みを引き起こした。かつて強みであったはずの現場と経営層の日常的な意見交換や、社員間の「飲みニケーション」などのつながりが絶たれた。一時的なボーナスカットも重なる。
これらの結果、事業運営の中心を担うはずの30代を中心に、若手・中堅層の離職率が急増した。コロナ禍前は1%程度であった49歳以下の離職率が、22年度には3%台へと約3倍に跳ね上がったのだ。




















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