特集「サステナ担当者が知っておきたい投資家視点の企業価値向上」の他の記事を読む
いよいよ2027年から段階的に非財務情報の開示が始まる。企業価値向上を支援することが狙いの1つだが、現状は企業価値の1つの目安であるPBR(株価純資産倍率)が1倍割れとなっている企業も多く、簡単な道のりではない。ただ、企業側にも企業価値についての基本的な理解ができていない場合も多く、今こそ企業価値向上について幅広い層で基本的な理解が必要だ。そこで、この連載では企業価値向上に必要な資本コストなどの基本的な考え方をベースにESG(環境・社会・企業統治)などとの関連性についてまとめていく。
最終回となる第5回は、環境などESGの取り組みを行う企業の資本コストは低減するということについて解説する。
株式グリーニアムは存在するのか
近年、企業の環境問題への取り組みと株式期待リターン(株主資本コスト)の関係に関する実証研究が国内外で多数公表されている。とくに、環境に優しい取り組みを行っていると投資家が認知している「グリーン株」とそうでない「ブラウン株」の期待リターンの差である「株式グリーニアム(greenium)」が各国の市場に存在するかどうかの議論が活発になっている。
株式グリーニアムを推定した最近の事例として、コペンハーゲン・ビジネス・スクールのLasse H. Pedersen博士のグループの実証分析[1] がある。この研究では、企業の環境保護への施策およびその開示に係るパフォーマンス(環境保護に対して積極的に取り組み、それを高い透明性をもって開示している程度)を反映した頑健なグリーンスコア(以下、「GS」)を構築し、これとインプライド資本コスト(連載第3回参照)を組み合わせることで、アメリカおよび日本市場を含む49カ国の株式市場を対象とした株式グリーニアムを推定している。




















