
株主総会の開催前に有価証券報告書(有報)を開示する企業が急増している。東洋経済の調べでは、3月期決算企業で総会前に開示したのは昨年はわずか41社にとどまっていた。それが2025年は約1250社に上っている。
その中でも先進的なのが、近年は最先端半導体に欠かせないEUV(極端紫外線)向けガラス基板で投資家からも注目されているHOYAだ。
昨年は総会1週間前の6月20日に有報を提出していたが、今年は6月5日に開示した。今年の総会は6月26日に開催。約3週間前に有報を提出したことになる。
「当社は全グループ会社が月次決算を採用しているため、早期の情報収集が可能だ。早めの情報収集およびそのスケジュール管理を徹底している」とHOYAのIR担当者は説明する。その徹底した管理は、まさに力技と呼べるものだ。
有報の開示を早める企業が増える一方で、半導体製造装置大手のアドバンテストは、総会開催日を後ろ倒しするというアプローチをとる。
これまでは定時株主総会における議決権の基準日を毎年3月31日とし、4月1日から3カ月以内に総会を開くと定款で定めていた。その議決権基準日を5月15日とし、基準日から3カ月以内に総会を開くように変更した。
つまり7月下旬から8月上旬での総会開催が可能となる。アドバンテストの決算期は3月なので、決算期末から時間的な余裕が生まれる。
早期開示を決定づけた国会質疑
定款変更は6月27日の総会に諮られた。アドバンテストは変更の理由について、「株主の皆さまと建設的かつ実効的なエンゲージメントを図るためには、総会前の適切な情報提供が不可欠であると考えている」と記している。
定款変更は99.78%の賛成で可決された。株主からも一定の理解が得られたといえる。
これら一連の動きの背景には、政策的な後押しがある。きっかけの一つが、海外投資家団体からの要請だった。
2024年4月に首相官邸でICGN(国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)との意見交換が行われ、岸田文雄首相(当時)は「有報の早期開示を含む環境整備を進める」と明言した。
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