
――6月の株主総会に向けて株主提案を行いました。
元タレントの性加害スキャンダルに端を発した一連の問題に関するフジ・メディアHDの対応に、大きな危機感を覚えたからだ。そもそもダルトンは2023年にフジ・メディアHDの株式を取得し、MBO(経営陣による買収)による非上場化や不動産事業のスピンアウトなどを求めてきた。
当時フジ・メディアHDに目をつけたのはPBR(株価純資産倍率)が0.2倍程度と、低水準だったテレビ業界の中でも群を抜いて低かったからだ。その要因は、経営陣が日枝(久・取締役相談役)さんの影響力を強く受ける高齢な人ばかりでガバナンス上の大きな問題を抱えていたこと、またノンコア事業である不動産事業にばかり投資し、コア事業である放送事業に投資できていなかったことだ。
そこに図らずも今回のスキャンダルが発覚。フジ・メディアHDは対応を間違え、ほぼすべてのスポンサーが離れるという危機的な状況に陥ったため、株主として大きな危機感を覚えたのだ。ターンアラウンド(事業再生)には、オールドボーイズクラブには退場いただいて外部から新しい血を入れるべき。そこで社外取締役候補を提案することにし、今年2月から50~60人の方々と面談して引き受けていただいた12人を提案するに至った。
――提案した12人はSBIHDの北尾吉孝会長兼社長をはじめ、かなりキャラクターが立つ人たちばかりです。
取締役候補は知識と経験、そしてパワーとパッションがある人という基準で選ばせていただいた。テレビ局に対する知識はもちろん、次々に新しい事業を生み出すというパッションを持ち合わせていたのが北尾さんだ。菊岡稔さんは不正会計問題で潰れそうになっていたジャパンディスプレイの社長を務めた経験があり、フジ・メディアHDの再建にはそのノウハウを生かしていただける。
われわれは不動産のスピンアウトも求めているが、田中渓さんはゴールドマン・サックス証券などで不動産を担当し、経験が豊富だ。このようにテレビやエンタメ業界だけでなく、金融や不動産といった世界の専門家を取りそろえることができたと考えている。
名前すら知らない人ばかり
──とはいえフジ・メディアHDも、第三者委員会の調査結果が出る前に経営陣の刷新を発表し、その後もダルトン側の意見をくみ取った形で金光修社長の退任も発表しました。結果、フジテレビの清水賢治社長以外、すべての取締役が交代するとしています。
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