
株主総会で経営陣が退任に追い込まれ、代わりにアクティビスト(モノ言う株主)が取締役会を掌握する――。そんな異常事態に直面している企業がある。
6月24日、神奈川県相模原市内のホテルの一室。東証スタンダード市場に上場する東京コスモス電機が開いた株主総会で事件は起きた。会社側が社長を含む取締役5名の選任を提案するも、賛成率が過半に届かず否決。対照的にアクティビストたちによる取締役8名の選任議案は全員可決され、監査等委員を除く取締役が丸ごと入れ替わったのだ。
前代未聞の交代劇はなぜ起こったのか。2年近くに及んだ会社とアクティビストの暗闘を追った。

目をつけられた激安株
始まりは2023年9月に提出された大量保有報告書だった。提出主はシンガポール籍の投資ファンド、スイスアジア・フィナンシャル・サービシズ(SAFS)。エンゲージメント投資を標榜する機関投資家で、UBS証券やローン・スター日本法人などに勤務した門田泰人氏が最高投資責任者(CIO)を務める。
SAFSが東京コスモス電機の株を取得した理由は単純明快だ。「株価がとにかく『割安』だった」。門田CIOはこう言い切る。
東京コスモス電機の本業は可変抵抗器の製造販売で、近年は車載用電装品にも力を入れる。直近決算では11億円の純利益を上げていたが、当時の時価総額はたったの40億円台。企業価値に対するEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)倍率も著しく低かった。
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