「社外取締役は誰1人辞めないのかと耳を疑った」(日産の元幹部)。そんな声も聞かれる経営刷新人事の注目点とは。

「こうした状況で、次の社長にバトンを渡すことになったことは忸怩たる思い」。日産自動車の内田誠社長はそう歯をきしませた。
就任から6年目を迎えたものの、昨年12月から開始したホンダとの経営統合協議がわずか1カ月半で破談となるなど、進退窮まっていた内田社長。3月31日付で経営トップの座から降りることになった。
日産は目下、深刻な経営危機に陥っている。主力の北米市場での販売が急激に悪化したことを主因に、今2025年3月期は800億円の最終赤字に転落する見込みだ(前期は4266億円の最終黒字)。
経営再建のために、9000人の人員削減や生産能力の2割削減を柱とするターンアラウンド(構造改革)の具体化を進めている。
2月13日の会見で内田社長は「内田はもう必要ないと言われれば、しがみつくつもりはない」と語る一方、「ターンアラウンドに責任を持ってやっていきたいというのが私の強い思い」とも述べていた。
責任を問う声には抗えず
しかし、社内外から日々高まる経営責任を問う声には抗えなかった。社外取締役を中心に5人で構成する指名委員会は3月11日、チーフプランニングオフィサーを現在務めるイヴァン・エスピノーサ氏を次期社長兼CEOに選定した。
後任のエスピノーサ氏の評価は不安と期待で分かれる。
「売れる車がない」と言われる現在の日産で、業績悪化の要因でもある商品企画の担当役員を務めていることから、その登用を疑問視する声がアナリストなどから上がる。一方、日産関係者の評判はおおむね悪くない。
エスピノーサ氏は現在46歳。自動車調査会社などを経て2003年にメキシコ日産に入社して以来、商品企画畑を歩んだ。ほぼ日産プロパーと言えるキャリアだ。
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