
「まさか」ではなく「ようやく」である。
日産自動車は4月24日夜、2025年3月期の純利益が7000億~7500億円の赤字に転落する見通しを発表した(前期は4266億円の黒字)。
昨年5月、期初に日産が示した純益予想は3800億円の黒字だった。これが7月末に3000億円へと修正された。それが11月には未定となり、今年2月には800億円の赤字へと下方修正された。それからわずか2カ月で、さらに6000億円以上も損失が膨らんだことになる。

主因はリストラ費用の積み増しだ。2月時点では第4四半期(2025年1~3月)に1000億円のリストラ費用を計上するとしていた。今回、日産は北米、中南米、欧州、日本における生産設備などで5000億円を超える減損損失と600億円の構造改革費用を計上したと説明する。
もともと「踏み込み不足」との声
日産の業績悪化の要因の1つに過剰な生産能力がある。グローバルで約500万台の生産能力対して、2025年3月期の販売台数は前期比2.6%減の335万台。自動車業界では一般的に、黒字確保には8割程度の工場稼働率が必要とされるが、日産のそれは7割を割り込んでいる。
昨年11月には生産能力の2割削減や従業員9000人の削減などを軸とした「ターンアラウンド(経営再建策)」を策定。350万台規模でも利益を出せるコスト構造を目指すとし、前述のように今年2月には第4四半期に1000億円のリストラ損失を計上するとしていた。
だが、工場閉鎖はタイなど一部にとどまっており、もともとアナリストなど市場関係者の間では「構造改革は踏み込み不足」「本来なら5000億円規模の減損計上は不可避のはずだ」との声が出ていた。
その意味では、ようやく必要な構造改革の覚悟を示したとも言える。巨額損失を発表した翌4月25日の株価は335円、前日比+1.6%で引けた。大半がキャッシュアウトを伴わない減損であり、手元資金が2月時点の見通しと大きく変わらないこともあってか、株式市場が「好感した」とまでは言えなくとも、ネガティブサプライズとは受け取らなかった。
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