日産、「旧ケイレツ」を救済せざるをえない事情 経営危機の河西工業に60億円出資の舞台裏
かつての「ケイレツ」を救済する日産自動車の狙いはどこにあるのか?
5月9日、日産は主要サプライヤーの1社である河西工業に対して60億円の出資を行うと発表した。河西工業が6月27日に開催する株主総会での承認を経た後、第三者割当で発行する優先株式を引き受ける。この優先株には普通株と同等の議決権が与えられており、日産は議決権ベースで13%を握る筆頭株主になる。
ゴーン「系列解体」で資本関係は解消
河西工業は、主に日産向けにドアトリムなどの内装部品を製造・販売する老舗の名門サプライヤーで、2000年代初頭までは日産が約2割の株を持つ筆頭株主だった。カルロス・ゴーン氏による「系列解体」の結果、日産との資本関係はなくなったが、深い取引関係は継続している。
その河西工業が深刻な経営危機に陥っている。日産の拡大戦略に応じて海外での生産能力を増強してきたが、日産の販売台数がピーク時の577万台(2017年度)から344万台(2023年度)まで4割も減少したことが大きな打撃となった。2023年3月期まで4期連続で最終赤字を計上。財務の健全性を示す自己資本比率は42.9%(2019年3月期)から7.7%(2023年3月期)に悪化した。
2022年5月と9月に総額約378億円のシンジケートローンやコミットメントライン契約を締結するなどした結果、有利子負債は700億円規模まで膨張。業績と財務の悪化によってたびたび財務制限条項(コベナンツ)に抵触し、債務の一括返済を迫られかねない状態に陥った。
2022年11月以降、河西工業は事業会社28社、ファンド21社のスポンサー候補に支援を求めたが、いずれも「借入金が過大で検討は難しい」と断られた。最大の取引先である日産にスポンサー支援を要請し、2024年1月末には再建へ向けた意向証明書が日産から提出された。
その後、河西工業、日産、銀行団の間で、水面下の協議が続いていた。ようやくまとまった再建計画の一環が、今回の日産による出資である。同時にメインバンクのりそな銀行からの借入金176億円のうち60億円を自己資本として認識される資本性劣後ローンへと転換する「デット・デット・スワップ(DDS)」も実施することによって、財務体質の改善につなげる。
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