日産、「旧ケイレツ」を救済せざるをえない事情 経営危機の河西工業に60億円出資の舞台裏
河西工業にとって、日産の支援は干天の慈雨となる。反面、日産の支配力が急激に強まるのは間違いない。
今回の投資契約の中で、日産は河西工業の2名の取締役候補を指名する権利(10%以上の議決権を保有する場合)を持つ。株主総会の承認を経た後、9月には日産出身の古川幸二氏(現ジヤトコ専務)が河西工業の社長に就任する予定だ。
日産には、さらに出資比率を引き上げるオプション(選択肢)もある。出資から1年後、優先株を普通株へ転換することが可能な取得請求権が付与されており、これを行使すると日産の出資比率は75%まで上昇する。
日産色が強まるデメリットも
だが、河西工業にとって日産の支配力が強まるのはマイナス面もある。
直近の河西工業の売上高に占めるメーカー別販売割合は、日産が約53%、ホンダが約19%、SUBARUを含むトヨタ系が約16%。近年はトヨタ自動車の基幹車種「アルファード」にドアトリムが採用されるなど、非日産向けの売上比率が徐々に拡大してきた。日産の子会社となれば、こうした非日産向け取引拡大に逆風となりかねない。
ただ、日産も子会社化は望んではないようだ。経営難に陥っている河西工業は当面、配当を出せる状況でもない。東洋経済の取材に対して、日産は「自主再建を支援するための出資であり、(子会社化については)再建が実現したタイミングで再度、河西工業と論議します。日産が支配するような意図はありません」とコメントしている。
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