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失脚説や健康不安説が相次いで流れる習近平(Eric Lee/The New York Times)
最近、インターネット上などを中心に、習近平の権力低下や失脚のうわさが取り沙汰されている。例えば、軍の高官人事の不安定化と今後の政局の行方について、次のような見方がある。
習近平失脚orワンマン化?台湾有事リスクにも影響
2022年から始まった第3期習近平政権以降も、汚職や規律違反を口実として、軍高官の解任・失脚・消息不明が相次いでいる。そのなかには何衛東(中央軍事委員会副主席)や苗華(元・中央軍事委員会委員)をはじめ、習近平の子飼いの部下とみられる人物も含まれている。
これは、軍内部の習近平の敵対者による習の影響力低下を狙った策謀の成功を意味する。他方、もう一人の中央軍事委員会副主席で軍のナンバー2である張又俠の権力は強まり、状況次第では、胡錦濤派に代表される反習近平グループと張又俠の結託によるクーデターや、習近平の任期途中の早期退陣もありうるかもしれない。
上記の「習近平権力低下」説によれば、2025年4月の李幹傑(前・中央組織部長)と石泰峰(前・統一戦線工作部長)の政治局員同士の役職交代も、党と国家の人事に対する習近平の影響力低下とみなされる。結果的に、今後、習近平の個人支配は弱体化に向かうとされる。
一方で、「習近平権力維持、部下見限り」説と呼ぶべき下記のような見方もある。
何衛東や苗華らの処遇は、彼ら自身の汚職への関与や、管理職者としての彼らの能力不足に対する習近平の信頼の喪失が主な理由である。
人事や規律を所管するこれらの人びとが昇任の推薦を行った者たちの腐敗事件の相次ぐ摘発や、彼らによる軍内派閥の形成が懸念されたという。李幹傑と石泰峰の役職交代も、李による人事失当への習近平の不信感の表れ、管理者責任が問われたものとされる。
「部下見限り説」の説明が正しいとすれば、習近平の権力の弱さではなく、むしろワンマン経営者による恣意的な人事の運用と同様、ボスの一存で重要ポストの人事がコロコロと変わることのほうが問題視されるだろう。あるいは、「腐敗の罪を犯した者は側近でさえ容赦なく切り捨てる」という習近平の威信や部下たちの恐怖心を高める可能性もある。習近平に近しい軍人たちの更迭は、指導者の権威の強化と弱体化の両方の側面があり、一面的な評価はできない。
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