ニューヨーク市のブルックリンに住む3児の母、ケイト・シャッツェンゲルは、なかなか恵まれた暮らしをしており、その自覚もある。
テクノロジー関連の仕事をしている38歳のシャッツェンゲルは、一家の保育料が昨年5万ドル(約770万円)もかかったが、それを支払えたことをありがたく思い、金利が低かった時期に夫婦で自宅を購入でき、さらにコロナ禍の時期に住宅ローンを借り換えられたことにも感謝している。
だが同時に、子供たちがそれぞれのベッドをカーテンで仕切った状態で、いつまで無理なく1つの寝室を共有できるだろうかと不安に思ってもいる。まあまあ手の届きそうな近隣地区、ケンジントン周辺でもっと広いアパートを探してみても、予算の範囲を大きく超える物件ばかりだ。
シャッツェンゲルは「現実的に手の届きそうな次の手がある気がしない」と言う。
高所得有権者の支持が決定的勝因に
これこそが、それなりに若くて、それなりに中間層的なニューヨーカーたちが共有している感覚だ。彼らは、街にはきらびやかな富があふれているのに自分たちにはとても手が届きそうもない、という幻滅を抱えている。彼らが目にしているのは無限の可能性に満ちたニューヨークではなく、その幻影なのだ。
そんな彼らが今回、ゾーラン・マムダニをニューヨーク市の次期市長に押し上げた。
34歳の民主社会主義者マムダニは、世界有数の高物価都市ニューヨークをもっと暮らしやすい街にするという主張で市長選挙を戦い、多額の費用を大胆に注ぎ込んで社会的セーフティーネットを拡充するという公約を掲げた。
シャッツェンゲルは「政治が、いま権力を握っている人たちだけでなく、この街のすべての住民のために機能するかもしれないということに、本当に元気づけられる」と話した。
もちろん、マムダニが勝利したのには多くの要因がある。



















