ハーバード大学「新奨学金制度」で見せた太っ腹! 年間授業料800万円超を免除する世帯年収の上限を2倍の「2900万円」に引き上げへ

3月17日、アメリカの名門・ハーバード大学は低中所得家庭の学生を対象とする新しい奨学金制度を導入すると発表した。授業料約6万ドル(1ドル145円換算で約870万円)が免除となる世帯年収の上限を8万5000ドル(約1232万円)から20万ドル(約2900万円)へと2倍以上に拡大する。その背景には学歴格差が分断につながるアメリカの現状がある。
「学歴社会」アメリカの非情な現実
多くの日本人は、アメリカは実力主義の社会であると信じているが、本当のアメリカ社会は学歴社会であり、階級社会である(さらに言えば、コネ社会でもある)。学歴と仕事が直結し、高卒は高卒向けの仕事に、大卒は大卒向けの仕事に、大学院卒は大学院卒向けの仕事にそれぞれ就く。
ホワイトカラーや管理職は大卒、院卒向けの仕事で高卒が就くのは難しい。その結果、学歴格差が所得格差につながり、所得格差は地域格差を生む。
大卒は都市で管理職などの仕事に就き、高卒は非都市で工場労働者や店員などになるしかないからだ。近年、保守化しているとされる「白人労働者」は地方の高卒労働者と被り、トランプ大統領の最大の支持者になっている。学歴によって就ける仕事が分断されていることは、政治の分断にも結び付いている。
2023年の統計でアメリカの大学進学率は61.4%で、残りの約40%の若者は高校を卒業すると働き始める。また大学に入学しても、2025年の統計では23.3%が中退している(Research.Com、「College dropout rate」)。
大学中退の最大の理由は学業不振ではなく経済的要因だ。高額の授業料を払い続けることができず、多くの若者が退学している。大学中退は、労働市場では基本的に高卒と同じように扱われる。大学を卒業する比率は40%を割り込んでいるため、大学に入っても半数以上が高卒向けの仕事にしか就けない。
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