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中国の支援を受けたとみられる新主席の登場で台湾・最大野党の国民党はどうなるのか

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本稿は筆者の小笠原欣幸氏が台湾・香港拠点のネットメディア『關鍵評論』(中国語)で発表した論考を加筆修正したものです。全文無料でお読みいただけます。
国民党の鄭麗文主席
国民党の全国大会で演説する鄭麗文・新主席(写真:時事通信)

台湾で国民党の党主席選挙が10月18日に行われた。党員投票によって元比例区選出立法委員(国会議員)の鄭麗文(選出時55歲)氏が主席(任期4年)に選ばれた。鄭氏の得票率は50.1%で、2位の郝龍斌氏の35.8%と3位の羅智強氏の10.4%を大きく上回り、圧勝した。現職の朱立倫主席(64歳)は退任の道を選んで出馬しなかった。党員は約33万人、投票率は39.5%だった。

国民党内では9月まで盧秀燕・台中市長(64歳)が主席選挙に出ることを期待する声が圧倒的だった。台湾社会で一定の人気を持ち、2028年総統選挙で国民党の有力候補になると目されていたからだ。

明確な「親中」路線、ネット戦略で混戦制す

ところが盧氏は主席選挙不出馬を宣言。結果、6人が立候補する混戦模様となった。当初はベテラン政治家で元台北市長の郝龍斌(73歳)氏が有利だと見ている人が多かった。しかし、党内で実力者とは見られていなかった鄭麗文氏が選挙中に抜け出した。

鄭陣営は1分程度に編集したショート動画を拡散させるネット戦法(台湾では「空中戦」と呼ばれる)で他候補を圧倒。党員を対象とした世論調査で支持率トップに躍り出て、そのまま当選した。

鄭氏は選挙戦で「国民党を率いて、すべての台湾人が誇りと自信をもって『私は中国人』と言えるようにする。国民党主席は明確な中国アイデンティティが必要だ」と述べた。

何をもって「親中」と規定するかは注意が必要だが、鄭氏のこの発言は明確な親中路線だと見て間違いない。対立候補の郝龍斌氏は、中国との関係で比較的慎重な立場を示した。

選挙戦で中国アイデンティティ寄りの立場を主張して主席に当選したのは2016年に選出された元立法院副院長(国会副議長)の洪秀柱氏以来である。2017年以降の吳敦義・元副総統、江啓臣・立法院副院長、朱立倫・元新北市長の3人の主席は台湾社会の中間層を意識した立場であった。

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