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経営戦略の強化策としての「リジェネラティブビジネス」。バイオ、風力発電など先進事例から学ぶべき、5つのポイントとは?

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風力発電では地域経済活性化の取り組みが求められている(写真はイメージです)(YsPhoto/PIXTA)
ビジネスの世界で「リジェネラティブ」という概念が注目されている。日本総合研究所で長年にわたって企業コンサルティングにかかわってきた専門家が、日本企業が導入するうえでの要諦を解説する。前編でその概念や意義について詳しく触れた。後編である本稿では、バイオ、風力発電など具体的な事例を基に、リジェネラティブビジネスのあり方について深く掘り下げる。

リジェネラティブもしくはリジェネレーション(再生・新生)とは、自然環境や社会を破壊前の状態に戻す、すなわち事業によるマイナスをカバーするのではなく、元よりも良い状態へと再生・新生させることを目指すビジネスやエコシステムのあり方・考え方である。前編では、スペシャルティコーヒーの価値創出メカニズムを理解し、リジェネラティブビジネスの検討に関する企業側の問題点を共有した。後編では、複数の事例についての推測・解釈を経て、簡易的フレームワークによってメカニズムを解析することで、戦略的な示唆や提言につなげる。

微細藻類バイオ技術のスペイン企業アルガエナジーによる、バイオスティミュラント事業を挙げる。バイオスティミュラントは、植物・土壌の活性を高め、強い植物を作る農業資材だ。

2000年頃のヨーロッパでは化学肥料の依存度が非常に高いことが問題となっており、2030年までに有機農業割合を25%へ、肥料使用量を20%削減する目標が掲げられた。当時の有機農業の割合は、現在の日本と同等の数%に過ぎなかった。有機農業は、化学肥料や農薬を活用する通常の農業に比べ、労働などの農家の負荷が高い一方、品質・収量が落ちると言われている。そこで着目されたのが、バイオスティミュラントであり、これを使用することで品質・収量を高める効果が期待できる。

アルガエナジーはこの社会課題解決に、微細藻類バイオ技術を活用して着手した。

バイオ技術を、農業の再生に活用

微細藻類とは、数マイクロメートル~100マイクロメートルという、きわめて小さな植物プランクトンだ。微細藻類は、バイオスティミュラントの主成分となる多糖類やアミノ酸をタンパク質として多分に含んでいる。しかし、それを精製するだけではバイオスティミュラントとして機能しない。各エリアの土壌や作物によって、最適な処方が大きく異なるからだ。

そこでアルガエナジーは、アカデミアや各地域の肥料メーカー、農家と連携し、エリアや作物に合わせた適切な成分検討や微細藻類の育種を重ねている。

アルガエナジーから有機農業の処方を受けた農家は、品質・収量を高レベルで維持した農業を展開し、業績を安定化させている。ヨーロッパで望まれた有機農業の飛躍的成長につながり、さらに、化学肥料・農薬産業が排出していた温室効果ガス(GHG)削減や、有機肥料の使用による土壌炭素の固定も狙える。

このようにして自然環境・社会が再生・新生され、有機農業が広がれば、バイオスティミュラントの市場は広がり、微細藻類バイオスティミュラントのパイオニアだったアルガエナジーの売り上げにつながるという仕組みだ。結果として、当該事業は2桁成長を続け、高い値付けも可能であることから、粗利益率は30%を大きく超えている。

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