政治権力の「不安定」説が流れる習近平指導部だが、公式報道の読み解きにも注意が必要だ。

中国経済のピークアウト時に誕生した現中国指導部は、1980年代以降の歴代指導部とは異なる政治課題に直面している。それゆえ権力構造を集団指導から、個人指導へと転換させた。だからこそ指導部の権力に注目が集まる。
中国指導部は今、2026年から始まる国民経済と社会発展の五カ年計画の起草を進めている。5月20日の『人民日報』は、習近平国家主席がその基本方針として「科学的な政策決定、民主的な政策決定、法律に基づいた政策決定を堅持せよ」と述べたと報じた。この発言を捉えて、国際メディアでは、指導部の権力が不安定だ、という論点が提起された。
権力の不安定化説、根拠は胡錦濤の言葉を引用
その1つの根拠は、この言葉が胡錦濤氏による党総書記として最後の活動報告を行った2012年11月の第18回党大会での発言と同じだからだ。政治では政治指導者の言説は権力と一体であり、他者の言説を引用したならば、そこには政治的意味がある。「不安定」説の提起は、なぜ習氏は胡氏の言葉で言及したのかとの問いと同じだ。
この問いの起源は、3年前の第20回党大会にある。中国政治の慣例どおり、この大会で習氏は総書記として活動報告を行った。報告では自らの10年の執政を評価する一方で、それ以前の政治を「党の指導を堅持することについての認識が薄弱で、行動力の不足という問題があり、その党の指導にもまた弱体化、空洞化、形骸化の実態が散見された」とし、胡錦濤指導部の執政を批判した印象を与えた。
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