トランプ政権の減税・歳出法成立で、「再エネ潰し」が現実に。将来、停電続発、電気料金高騰の事態も

アメリカで7月4日に減税・歳出法が成立した。トランプ大統領が公約の目玉としてきた減税措置が延長され、膨大な財政赤字がさらに膨らむことになる。加えてエネルギーをはじめとする諸政策への影響も大きい。エネルギー分野では、バイデン前政権が取りまとめたグリーンニューディール関連予算が大幅に削減され、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)、省エネルギーなどに関する優遇措置が軒並み廃止・縮小されることとなった。
特に低コストで工期が短い再エネ開発が滞ることになれば、データセンターの建設ブームなどで急増する電力需要を賄う供給力が不足し、2030年までに停電が頻発するおそれがある。火力発電や原子力発電で賄うことは困難であり、前途が危ぶまれている。
新法はエネルギー政策にも大きな影響
7月3日にアメリカ連邦議会の下院は「1つの大きく美しい法案」(One Big Beautiful Bill Act)」と呼ばれる減税・歳出法案を可決した。トランプ大統領は独立記念日である7月4日に署名し、法律は成立した。
この減税・歳出法は、トランプ政権が最も重視する2017年減税措置の延長が核心となっている。減税規模は10年間で約3.8兆ドル(約550兆円)と巨額であり、これに軍事予算増や不法移民対策などの財政赤字要因が加わる。メディケイド(低所得者向けの公的医療保険)、グリーンニューディールなどの支出、食料費補助の削減などを織り込んでいるが、赤字削減効果は限られている。アメリカ議会予算局(CBO)の試算では、10年間で財政赤字は約3.3兆ドル(約480兆円)も増加する。
減税・歳出法案の成立過程では、エネルギー・環境政策も大きな争点となり、実際に歴史的な大変革となった。
そのうちの気候変動関連歳出は2034年までの10年間で約5000億ドル(約73兆円)も規模が圧縮される。バイデン前政権時にIRA(インフレ削減法)で導入された支援措置の多くは削減または適用期間が短縮された。IRAの目玉である税額控除(投資額の一定割合を法人税から控除する税制優遇措置)は2032年末までの適用が保証されていたが、今回、大幅な短縮となった。一方、石油、ガス、石炭などの化石燃料資源の開発は最大限優遇された。
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