局面一変・ウクライナと米欧に追い込まれたプーチン、ウクライナ和平で何が起きているのか

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無条件停戦提案で有志国とウクライナは、30日間停戦を2025年5月12日から開始するようロシアに要求した。本稿執筆時点で停戦が実際に始まったかはわからないが、プーチンはこの要求を事前に予期していなかったのだろう。明らかに慌てた。

2025年5月10日夜に発表されたこの停戦提案を受け、クレムリンはその直後の翌日未明にクレムリンで急遽記者会見を行い、プーチン自ら、5月15日にトルコでウクライナとの直接交渉を逆提案した。

この逆提案の時点でプーチンはトルコ側にまだ開催場所の提供について要請していないことを認めた。いかにバタバタの逆提案だったかを示す話だ。交渉の主導権がウクライナ側に移ったとの印象を内外にもたれるのを恐れたのだろう。

ロシアの最新兵器投入の可能性も

この逆提案に当たって、プーチンはロシアが侵攻に至った「紛争の根本原因の除去」を要求した。つまりウクライナと米欧が求める無条件の停戦入りを拒否したことを意味する。

根本原因の除去とは、ウクライナに対し、NATO(北大西洋条約機構)加盟などの西側志向をやめて事実上中立化するか、もしくはベラルーシのようにロシアの勢力圏に入ることを意味している。これをウクライナや有志国が受け入れるはずもない。

一方でゼレンスキーはこの直接交渉に応じる意向を表明し、プーチンに首脳会談を呼び掛けた。ロシアの逆提案に対する逆逆提案である。停戦交渉でウクライナが主導権を握ったことを誇示する狙いだ。結局、当面の焦点はロシアが無条件での停戦入りを受け入れるかどうかに絞られそうだ。

一方で気になる別の情報もある。ロシアがキーウに対し、最新の中距離弾道ミサイル、オレシュニクを発射するのではないかとの観測が出ていることだ。ウクライナ情勢は停戦どころか、戦争が激化する可能性も孕んでいる。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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