逆にプーチンにとっては大きな打撃となった。イギリス・フランス主導で2025年3月に発足した有志国連合は名実ともに、プーチンとの対決姿勢に踏み切った欧州の政治・軍事的戦略転換を象徴する存在になった。
おまけにこの制裁を背景にした無条件停戦提案は、元々アメリカのトランプ大統領が最近提唱したもの。つまり、これまで早期の和平・停戦実現に向けプーチン政権寄りの仲介工作を進めてきたトランプ外交がこれまでの仲介戦略を変更し、無条件での停戦を求めるウクライナと欧州に同調したことを意味する。
トランプとゼレンスキーの関係は大幅に改善
筆者は2025年4月29日付「トランプ政権の『ロシア寄り』ウクライナ和平案の背後にいるキーパーソンたち」で、トランプが自分の個人的友人で外交経験がゼロのウイットコフをロシアへの特使として使ってきたことを紹介した。結果的にこれが裏目に出て、プーチンから停戦への同意を引き出せなかった。
アメリカ政権とウクライナは2025年2月末のホワイトハウスでのトランプ、ゼレンスキー両大統領による異例の口論劇で、関係が悪化していた。しかし、外交筋は「あの時を最低として、その後両大統領の関係はここ1、2週間で大幅に改善した。今やアメリカ政権は有志国連合と同じ歩調だ」と指摘する。
つまり、トランプは早期の和平実現に向けた障害について、それはゼレンスキーではなく、停戦実現に対しウクライナが受け入れる可能性がない条件を突き付けるロシアだと理解したという。
トランプが翻意した大きな要因になったのは、ゼレンスキーやイギリスのスターマー首相によるトランプへの働き掛けだった。和平実現に向けプーチンがトランプに協力するかのような姿勢を見せているのはウソだと、スターマーは率先してトランプに伝えた。
トランプといたずらに対立せず、翻意に向け説得を進めるという戦略はスターマーがウクライナや有志国に説いて回ったものだ。これを受けて2025年4月末にバチカンでサシの会談を行ったトランプに対し、ゼレンスキーは「あなたはプーチンにだまされている」と強く説得したのが功を奏した。
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