「ない袖は振れない」は本当か 貧しい人々から富裕層へ富を移転する「緊縮効果」という名の罠 「財政再建」の裏にある「不都合な真実」

「緊縮効果」の不都合な真実
2020年3月、COVID-19のパンデミック初期に、アメリカ民主党所属のニューヨーク州知事アンドリュー・クオモは、州予算の一部として病院への医療支出を4億ドル削減する計画を発表した。
アメリカで最も注目される政治家の1人が、パンデミックを前にして最貧層向け治療費の支払いを引き締めると公言したことは、衝撃的な出来事だった。
彼は記者会見で「ない袖は振れないんですよ」と肩をすくめて見せた。この引き締めは翌年以降もさらに進むと予想され、州の公立学校にも同様の削減が予定されていた。
このような事例は、世界中で繰り返されている。2019年10月、チリのサンティアゴで地下鉄料金の値上げが発表されると、市民の抗議デモが街を覆い尽くした。
この抗議は交通機関の問題にとどまらず、民営化、賃金、公共サービスの引き締め、労働組合員疎外など、何百万もの国民の暮らしと社会を空洞化させた50年にわたる積年の犠牲に対しても向けられていた。
何十万もの人々が街頭に繰り出す中、チリ政府は独裁的な戒厳令をもって応じ、数週間にわたる警察権力の示威も含まれていた。
また、2015年7月5日には、ギリシャの有権者の61%が、債務危機に対して提案された国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)の救済計画に反対する国民投票を可決した。
しかしその8日後、国民投票で反対されたにもかかわらず、政府はとりあえず合意書に署名し、財政支出を制限する3年間の救済融資に落ち着いた。
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