戦後日本リベラルは台湾に無関心で無理解。高市首相の「台湾有事」答弁で改めてわかった中国に沈黙する構造問題
高市早苗首相が11月上旬に行った台湾有事に関する答弁がなおも波紋を広げている。中国は11月から始めた一連の報復措置をなおも継続しており、日本国内では答弁に対する評価やその経済的な影響について意見も分かれている。そして、その波紋は2025年の今なお台湾問題に対して日本社会の一部が無関心であり続けた問題も表してしまった。
12月21日に共同通信が公表した世論調査では、高市答弁を受けた日中関係悪化について日本経済に「悪い影響を与える」と回答したのは「どちらかといえば」を合わせ59.9%だった。一方で答弁自体については「不用意だったとは思わない」が57.0%で「不用意だったと思う」37.6%を上回った。毎日新聞が12月22日に報じた世論調査でも、答弁を「撤回する必要はない」が67%を占め、「撤回すべきだ」の11%を大きく上回った。
「台湾有事=日本有事」を否定したいリベラル派
高市首相の答弁に対して様々な見方が交錯し、強く支持する声がある一方で、強い批判的姿勢を示す人々も少なくない。とりわけSNS上では、いわゆる左派・リベラル系とみなされている知識人や社会運動家などが、「台湾有事=日本有事」という図式によって日本を再び戦争の最前線へと押し出すものだとして、強く反発している。
こうした批判の動きはネット上にとどまらず、東京や那覇などでこれまで複数回の抗議活動が行われた。
これら抗議活動の1つの事例として、市民グループ「We Want Our Future」による11月21日および11月28日に行われた抗議活動の呼びかけ文に掲げられた論点を整理すると、要旨としては次の3点を理由として「台湾有事=日本有事」論に反対している
② 「台湾有事≠日本の武力行使」という日本側の立場が旧帝国として中国を挑発
③ 高市答弁が日中関係を悪化させ、台湾海峡での軍事的緊張を高める危険性をはらむ
筆者自身は日本の右派や保守層が抱いている台湾観を支持する立場にはない。これらは植民地支配を肯定する視点と結びつきつつ、台湾を自らの反共・反中論の文脈に取り込んでしまっている面があるからだ。また高市政権を批判することに異を唱えているつもりもない。
しかし、日本の左派やリベラル派の発信は彼ら自身の政治的主張のために台湾に対して無関心を決め込んでいる点は大きな問題がある。例えば、上記で紹介した3つの論点の背景には、彼らの台湾理解に歴史的・政治的文脈を欠いた歪みが存在していることが垣間見える。その歪みこそが戦後日本の左派やリベラル派が台湾に対して無関心であり続けている原因だろうと思われる。


















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